車を擦ったなどの軽い接触事故|警察を呼ばないとどうなる?

2023年05月30日
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車を擦ったなどの軽い接触事故|警察を呼ばないとどうなる?

埼玉県警察が公表している交通事故の統計資料によると、令和4年に埼玉県内で発生した交通事故の件数は、1万6190件でした。そのうち、所沢市内で発生した交通事故の件数は、780件でした。

自動車事故には、車を擦っただけの軽微なケースもあります。この場合、加害者から「警察は呼ばないで済ませないか」などと話を持ちかけられることがあります。警察に連絡をすると実況見分などで時間を取られてしまうため、それらを面倒に感じて、つい加害者の話に乗ってしまうことがあります。

しかし、事故が起きたにもかかわらず警察を呼ばないと、その後、さまざまなデメリットが生じてしまいますので注意が必要です。今回は、車を擦ったなどの軽い接触事故で警察を呼ばないデメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。


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1、車を擦った程度の事故でも警察を呼ばないといけない?

車を擦った程度の軽微な事故であっても警察を呼ばないといけないのでしょうか。

  1. (1)交通事故には3種類の態様がある

    交通事故は、大きく分けて「物損事故」、「自損事故」、「人身事故」の3つの種類があります

    物損事故とは、死傷者がおらず、物だけが損傷した事故のことをいいます。車を擦った程度の事故であれば、物損事故で済むことが多いです。

    自損事故とは、車の運転者が単独で起こした事故のことをいいます。自損事故では、物損事故や人身事故のように事故の相手方は存在しません。たとえば、ガードレールや電柱に衝突したような事故が自損事故にあたります。

    人身事故とは、人が負傷または死亡した事故のことをいいます。

  2. (2)軽微な接触事故であっても警察への届出義務がある

    上記のように、交通事故は、物損事故、自損事故、人身事故の3種類に分けられますが、いずれの事故であっても、道路交通法によって、警察への事故の届出が義務付けられています(道路交通法72条)。

    被害者がいない自損事故や車を擦っただけの軽微な物損事故であったとしても、事故の届出を怠ると、5年以下の懲役または50万円以下の罰金というペナルティーを受けるおそれがあります。

    そのため、交通事故が生じた場合には、軽微な事故であっても、必ず警察に連絡するようにしましょう

2、軽い事故でも警察を呼ばないことによるデメリット

軽い事故であっても警察を呼ばないと、以下のようなデメリットが生じます。

  1. (1)交通事故証明書を作成してもらえない

    交通事故証明書は、交通事故の当事者や内容を公的に証明する書類のことをいいます。

    交通事故証明書は、警察が事故の概要を自動車安全運転センターに通知し、自動車安全運転センターが発行する書類です。そのため、交通事故証明書を作成するためには、警察への事故の届出が必要不可欠となります。

    軽い事故でも警察を呼ばないと、交通事故証明書を作成してもらえないというデメリットが生じます

  2. (2)損害賠償請求ができない

    交通事故によって怪我をしたり、車を傷つけられたりした場合には、事故の加害者に対して、損害賠償請求をすることができます。

    加害者が任意保険に加入している場合には、加害者の任意保険会社に請求していくことになりますが、交通事故証明書がなければ、交通事故と怪我の因果関係を証明することができません。因果関係が否定されてしまうと、任意保険会社から賠償金を受け取ることが難しくなります。

    また、自賠責保険会社に対して被害者請求する場合にも、交通事故証明書の提出が必須となります。たとえ擦っただけの軽微な事故でも、警察を呼ばないと適切な賠償金の支払いを受けられなくなるリスクがあるため注意しましょう

  3. (3)車両保険などを利用することができない

    車を擦っただけの軽微な事故では、損害としては車の損傷だけということも珍しくありません。

    そのため、相手が無保険であったり、被害者にも過失があったりするような場合には、被害者自身の車両保険を利用して車の修理を行うことがあります。

    被害者自身の保険を利用する際には、保険会社に事故の内容などを伝える必要がありますが、交通事故証明書がなければ、事故の内容を客観的に証明することができません。警察を呼ばないと交通事故証明書は発行されないため、車両保険などを利用することができなくなります。

  4. (4)自損事故が当て逃げになるリスクがある

    人身事故であれば事故を起こしたことだけで違反点数が付いてしまいますが、自損事故では、事故を起こしただけでは違反点数は付きません。

    しかし、自損事故を起こしたにもかかわらず警察への連絡をせず、後日、事故の事実を警察に知られた場合、当て逃げとして扱われるおそれがあります。当て逃げとして扱われると、違反点数7年が加算されますので、一発で免許停止になるおそれもあります。

3、交通事故証明書は後日でも受け取ることができる?

交通事故証明書は、後日でも受け取ることができるのでしょうか。

  1. (1)交通事故証明書とは

    交通事故証明書とは、交通事故の内容などを公的に証明する書類です。

    交通事故証明書には、以下のような内容が記載されています。

    • 交通事故の発生日時
    • 交通事故の発生場所
    • 交通事故の当事者に関する事項(住所、氏名、生年月日、車両番号、車種、自賠責保険関係、自賠責保険の証明書番号、事故時の状態)
    • 事故類型
    • 物件事故、人身事故の別


    交通事故証明書は、自動車安全運転センターに申請して交付を受けることができます。なお、センターが警察から事故の概要通知を受けていなければ証明書の発行はできないため、ご注意ください。

  2. (2)交通事故証明書は後日の受け取りも可能

    交通事故が発生した場合には、警察にすぐに連絡して、事故の届出をしなければなりません。そのため、交通事故の届出は、後日ではなく、事故の当日に行うのが原則となります

    これに対して、交通事故証明書は、警察に事故の届出をした後に作成されるものですので、後日の申請・受け取りが原則となります。

    後日、交通事故証明書を申請する場合には、以下の3つの方法があります。

    ① 窓口申請
    窓口申請をする場合には、自動車安全運転センターに出向いて直接申請を行います。自動車安全運転センターの窓口には、所定の申請用紙を置かれていますので、記入をし、手数料の支払いを行うことで、原則として即日交通事故証明書の交付を受けることができます。

    ② ゆうちょ銀行・郵便局での申請
    ゆうちょ銀行・郵便局で申請をする場合には、申込用紙に必要事項の記入をし、手数料の支払いをして、交通事故証明書の発行申請を行います。交通事故証明書は、発行申請から約10日で指定した住所宛てに郵送されます。

    ③ オンライン申請
    交通事故証明書は、自動車安全運転センターのウェブサイトから発行申請をすることもできます。手数料をコンビニやインターネットバンキングなどで支払うと、約10日で指定した住所宛てに交通事故証明書が郵送されます。なお、オンライン申請は、交通事故の当事者しか行うことができません。

4、交通事故に遭ったときは弁護士に相談を

交通事故に遭ったときは、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)保険会社との交渉をまかせることができる

    加害者が任意保険に加入している場合、事故後の連絡は、保険会社の担当者との間で行います。

    保険会社からの連絡は、平日の保険会社の営業時間内に来るのが一般ですが、日中の時間帯は、仕事や家事で忙しく、対応ができないという方も少なくありません。

    弁護士に依頼をすれば、保険会社との連絡窓口を弁護士にできるため、保険会社からの連絡で煩わされる負担を解消できます。また、保険会社に伝えたいことがある場合にも弁護士が連絡をしますので、保険会社とのやり取りで生じるストレスも軽減することができます。

  2. (2)治療費の打ち切りの交渉も可能

    車を擦っただけの軽微な事故でも、怪我が生じるケースがあります。

    この場合、怪我の治療費として保険が適用されますが、一定期間が経過すると、保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。

    その時点で怪我が完治していれば、当然治療は終了となりますが、まだ完治には至らず治療の継続が必要である場合には、治療費の支払いを継続してもらえるよう、医師の診断書を取得したり、保険会社と交渉をしなければなりません。

    弁護士に依頼をすれば、このような治療費の打ち切りの対応もまかせることができます

  3. (3)慰謝料を増額できる可能性がある

    交通事故の慰謝料の算定には、以下の3つの基準があります。

    • 自賠責保険基準
    • 任意保険基準
    • 弁護士基準(裁判所基準)


    保険会社が示談交渉の際に提示してくる慰謝料額は、自賠責保険基準または任意保険基準で算定した慰謝料額ですが、弁護士基準で算定した慰謝料額に比べると低い金額になります。

    十分な慰謝料額を請求するためには、弁護士基準による算定が必要となりますが、示談交渉で弁護士基準を利用できるのは、弁護士に示談交渉を依頼した場合に限られます。

    そのため、慰謝料額を増額したいという場合には、弁護士への依頼が不可欠です

5、まとめ

車を擦っただけの軽微な物損事故や自損事故では、警察を呼ばないで事故処理を終えてしまうことがあります。

しかし、道路交通法では、軽微な事故であっても警察への届出が義務付けられていますし、警察への届出を怠ると、その後の手続きで必要になる交通事故証明書の交付も受けられなくなってしまいます。そのため、事故に遭った場合には、必ず警察に連絡をするようにしましょう。

交通事故の被害に遭ってお困りの方、慰謝料請求をご検討の方は、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスまでお気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています