交通事故事件における訴訟|裁判で争うべきケースとかかる時間
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埼玉県警察が公表している交通事故の統計資料によると、2023年の所沢市内の交通事故件数は、人身事故が762件、交通事故死者数が4名、物件事故件数が6731件でした。
交通事故で怪我をした場合、慰謝料などの賠償金の支払いに関して、加害者側の保険会社との間で示談交渉が行われます。示談交渉により話がまとまればよいですが、そうでない場合には、訴訟にまで発展するケースもあります。
交通事故事件で訴訟になった場合には、どのような流れで手続きが行われ、解決までどのくらいの期間がかかるのでしょうか。訴訟で争うべきケースとあわせて、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故における訴訟とは
交通事故における訴訟とはどのようなものなのでしょうか。以下では、交通事故訴訟の概要と解決までにかかる期間について説明します。
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(1)交通事故における訴訟の概要
交通事故における訴訟とは、被害者が交通事故によって生じた損害を加害者に対して請求する裁判をいいます。裁判には、「民事裁判」と「刑事裁判」の2種類がありますが、交通事故の訴訟は、民事裁判に分類されます。
交通事故によって怪我をした場合、被害者には、治療費、休業損害、慰謝料などの損害が発生します。このような損害は、怪我が完治または症状固定と診断された後、加害者側の保険会社との示談交渉により支払いを求めていくことになります。しかし、示談交渉は、あくまでも話し合いの手続きになりますので、お互いに納得いく解決案が提示されなければ、示談は不成立となってしまいます。
このような場合には、最終的に訴訟を提起して、裁判所に適正な損害額などの認定をしてもらうことになります。それが交通事故における訴訟です。 -
(2)訴訟から解決までにかかる期間
裁判所が公表している「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」によると、民事裁判全体の平均審理期間は、9.9月であるのに対して、交通事故の訴訟では13.3月もの期間がかかっています。
実際に訴訟を提起した場合、解決までにかかる期間は、ケース・バイ・ケースになりますが、1年程度の期間がかかると考えておいた方がよいでしょう。
2、訴訟を検討すべきケース
交通事故の被害に遭った方が、訴訟を検討すべきケースとしては、以下のケースが挙げられます。
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(1)保険会社が提示した賠償額に納得ができない
加害者が任意保険に加入している場合には、加害者側の保険会社から賠償額の提示が行われます。被害者は、保険会社から提示された賠償額を見て、示談に応じるかどうかを検討することになります。
しかし、保険会社から提示される賠償額は、裁判になった場合に支払われるべき金額に比べて低い額しか提示されないのが通常で、交渉をしたとしても、十分な上乗せは期待できません。そのため、保険会社から提示された賠償額では納得できないという場合には、訴訟をした方が満足いく金額の支払いを受けられる可能性があります。 -
(2)過失割合で争いがある
過失割合とは、交通事故による被害者側と加害者側の責任を割合で示したものになります。停止中の追突事故であれば、加害者側の一方的な過失により生じた事故といえますので、過失割合は、「被害者:加害者=0:100」になります。
しかし、事故態様によっては被害者側にも責任が生じるケースもありますので、その場合には、過失割合をめぐって争いが生じることもあります。
過失割合は、基本的には、保険会社との話し合いで決めることになりますが、話し合いで合意が得られない場合には、適正な過失割合を裁判所に判断してもらう必要があります。 -
(3)後遺障害等級認定の結果に納得ができない
後遺障害等級認定の手続きは、基本的には自賠責損害調査事務所という認定機関により書面審査がされます。そのため、提出した診断書や検査結果によっては、納得いく等級が認定されないケースもあります。
そもそも後遺障害等級認定とは、これ以上治療を続けても症状が改善しない「症状固定」後に残存している症状、いわゆる後遺障害に対する賠償金を受け取るための手続きです。等級によっては大幅に金額が変わることもあり、適切な認定を受けることが事故後の安定した生活に欠かせません。
訴訟では、裁判所を介して改めて後遺障害等級を求めることができますので、後遺障害等級認定の結果に納得ができないときは、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。 -
(4)時効が迫っている
交通事故の損害賠償請求権の時効は、物損事故については3年、人身事故については5年という期間が定められています。
保険会社との示談交渉が長期化しており、時効期間が迫っているという場合、そのまま示談交渉を続けていると時効完成により、権利が失われてしまうリスクがあります。そのため、時効期間内に示談がまとまる見込みがないときは、訴訟を提起することによって、時効期間の進行をストップする必要があります。
3、交通事故被害者自身で訴訟を行う手順とかかる費用
以下では、交通事故の被害者自身で訴訟を行う場合の手順とその際にかかる費用について説明します。
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(1)交通事故訴訟の手順
交通事故の訴訟は、一般的に以下のような手順によって進められます。
① 裁判所に訴状を提出
裁判は、原告が裁判所に訴状を提出することでスタートします。交通事故の訴訟では、賠償金の支払いを求める被害者が「原告」、加害者が「被告」になります。訴状に記載した事実を裏付ける証拠がある場合には、訴状とともに証拠の提出も必要になります。
② 期日の指定
裁判所によって訴状が受理されると、第1回口頭弁論の期日が指定され、被告に対して、訴状や証拠などの書類が送達されます。被告は、裁判所から届いた訴状や証拠を確認し、反論がある場合には、「答弁書」という書面を作成して、裁判所に提出しなければなりません。
③ 第1回口頭弁論期日
原告および被告は、指定された日時に裁判所に出頭して、第1回口頭弁論を行います。
口頭弁論では、原告が提出した訴状の陳述、被告が提出した答弁書の陳述、両者から提出された証拠の確認が行われます。その後、次回以降の期日の日程が決められて、第1回口頭弁論期日は終了となります。
④ 続行期日
第1回口頭弁論期日以降も、1か月に1回くらいのペースで期日が開催されます。続行期日では、原告と被告の双方から主張や反論を記載した「準備書面」と呼ばれる書面が提出され、争点の整理を進めていきます。
⑤ 和解勧告
期日を重ねてある程度争点の整理ができてきた段階で、裁判所から和解案が提示されることがあります。これを「和解勧告」といいます。
原告と被告の双方は、裁判所から提示された和解案を検討し、和解を受け入れるかどうかを判断します。双方が和解に応じる場合には、和解成立により訴訟は終了となります。
⑥ 証人尋問・本人尋問
和解が成立しない場合には、期日が続行されます。そして、双方から主張や証拠が出そろった段階で、証人尋問や本人尋問の手続きが行われます。なお、証人尋問や本人尋問を終えた後、裁判所から再度の和解勧告がなされることもあります。
⑦ 判決
当事者が和解による解決を希望しない場合には、最終的に裁判所は、当事者双方の主張および立証を踏まえて、判決を言い渡します。判決内容に不服がある場合には、判決の送達を受けたときから2週間以内に控訴という不服申し立てを行うことができます。 -
(2)交通事故訴訟でかかる費用
交通事故訴訟を被害者自身で行う場合には、弁護士費用は一切かかりません。しかし、その場合でも以下のような費用が発生します。
① 民事裁判の申立手数料
訴訟を提起する際には、手数料として、印紙を裁判所に納めなければなりません。手数料の金額は、請求金額に応じて、以下のように定められています。- 訴訟の目的の価額が100万円までの部分……その価額10万円までごとに1000円
- 訴訟の目的の価額が100万円を超え500万円までの部分……その価額20万円までごとに1000円
- 訴訟の目的の価額が500万円を超え1000万円までの部分……その価額50万円までごとに2000円
- 訴訟の目的の価額が1000万円を超え10億円までの部分……その価額100万円までごとに3000円
たとえば、損害賠償金として300万円の支払いを求める場合には、2万円分の印紙が必要になります。
② 郵便料
裁判所から当事者などに書類を送達する際には、原告があらかじめ裁判所に納めた切手が利用されます。そのため、訴訟を提起する際には、手数料と一緒に郵便料として郵便切手を納める必要があります。必要な郵便切手の金額や組み合わせは、裁判所によって異なりますので、事前に裁判所に確認するとよいでしょう。
4、弁護士に対応を任せるべき理由
以下のような理由から交通事故の被害に遭った場合には、弁護士に任せるのがおすすめです。
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(1)交渉によるストレスを軽減できる
交通事故の示談交渉は、保険会社と被害者との間で行われます。しかし、保険会社の担当者は、多くの交通事故事案を扱っていますので、被害者との間には圧倒的な情報量・交渉力の格差があります。そのような担当者を相手に有利な条件で示談するのは難しいでしょう。
弁護士であれば、被害者に代わって保険会社の担当者と交渉することができますので、被害者自身の交渉によるストレスを軽減し、有利な条件で示談できる可能性が高くなります。 -
(2)慰謝料を増額できる可能性がある
保険会社から提示される慰謝料は、任意保険基準という保険会社独自の基準に基づいて算定された金額になります。この金額は、訴訟になった場合に裁判所が認定する基準である「裁判所基準(弁護士基準)」に比べると低い水準であることが多いです。
裁判所基準による慰謝料の支払いを求めるためには、訴訟を提起する方法以外にも弁護士に示談交渉を依頼するという方法があります。弁護士が示談交渉を行う場合には、裁判所基準で計算した慰謝料を請求することができますので、訴訟を提起しなくても慰謝料を増額できる可能性があります。
5、まとめ
保険会社との示談交渉がまとまらないときは、裁判所に訴訟を提起する必要があります。しかし、訴訟になると約1年もの期間がかかり、その間複雑な手続きを行っていかなければなりません。一般の方だと訴訟手続きを適切に進めていくのは難しいため、早い段階で弁護士に依頼をするのがおすすめです。
保険会社との交渉が決裂して交通事故裁判をお考えの方は、交通事故弁護の実績がある弁護士のサポートが重要になります。ベリーベスト法律事務所は交通事故専門チームを有しており、メディカルコーディネーター(医療相談員)と弁護士の連携によってご依頼者さまの問題解決に向けて尽力いたします。まずは、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスまでお気軽にご相談ください。
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