代襲相続で孫が相続するケース|相続分や遺留分についても解説
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所沢市を管轄するさいたま家庭裁判所川越支部では、令和3年に708件の遺産分割事件が申し立てられました。
相続が発生した時、遺産分割の話をするにはまず「誰が相続人なのか」を確認する必要があります。遺産分割の内容を決める協議は相続人全員の参加と同意が必要不可欠です。相続人の確認漏れがあって本来参加しなければいけない相続人が協議に参加していない場合は、協議が成立していてもやり直さなければいけません。
そのため、まず相続人が誰なのか確認をすることは遺産分割をスムーズに行うためにも重要なことといえるでしょう。そして相続人を確認するためには知っておきたいのが「代襲相続」という制度です。「代襲相続」の内容や注意点について、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。
1、代襲相続で孫が法定相続人になるケース
「代襲相続」を知っておくことで、遺産分割協議をするときに必要な相続人が揃わないという事態を防ぐことができます。
「代襲相続」の詳しい内容を、数次相続との違いとともに確認していきましょう。
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(1)代襲相続とは
人が亡くなったときに誰が相続人になるかについては、民法に「法定相続人」として定められています。「法定相続人」は被相続人(亡くなった方)の配偶者と血族です。配偶者は必ず相続人になりますが、血族については相続人になる順位があります。
- ① 被相続人の子ども
- ② 被相続人の両親や祖父母
- ③ 被相続人の兄弟姉妹
被相続人に子どもがそもそもいなかった場合は被相続人の両親や祖父母が相続人になり、両親や祖父母もいなかった場合には被相続人の兄弟姉妹が相続人になるのです。
では被相続人に子どもがいて、その子どもが被相続人よりも先に亡くなっていたようなケースでは誰が相続人になるのでしょうか?
このときにポイントになるのが「その相続人に子どもがいたかどうか」です。被相続人よりも先に亡くなった相続人に子どもがいた場合、その子どもが代わりに相続人になります。
この制度を「代襲相続」といい、被相続人の孫や被相続人の兄弟姉妹の子どもが「代襲相続」の対象です。
つまり、①の被相続人の子どもが亡くなっていても相続人に子どもがいるケースでは②の被相続人の両親に相続の順番は移らず、「代襲相続」によって被相続人の孫が相続人になります。 -
(2)数次相続との違い
相続人が誰なのか確認するときに代襲相続と間違われやすいのが「数次相続」です。「相続人が亡くなった日がいつなのか」によって「代襲相続」になるのか「数次相続」になるのか異なり、相続人の範囲が変わります。
代襲相続は「被相続人の死亡前」に相続人が亡くなった場合に行われるのは解説してきたとおりです。
一方、数次相続は「被相続人の死亡後から遺産分割が終了する前の間」に相続人が亡くなった場合に行われます。
相続人が「被相続人の死亡後から遺産分割が終了する前の間」に亡くなった場合、その相続人の子どもが相続人になるだけではなく、相続人の法定相続人全員が相続人になるのです。
たとえば、祖父が亡くなって遺産分割が終わる前に祖父の子どもである父親が亡くなったとしましょう。父親には配偶者も子どももいます。
その場合、祖父の遺産を「子ども」だけではなく配偶者も受け取ることができるのです。
このように「代襲相続」になるのか「数次相続」になるのかによって相続人の範囲も変わるため、「相続人が亡くなった日がいつなのか」ということに気をつけて相続人を確認しましょう。 -
(3)孫が法定相続人になるケース
代襲相続は本来の相続人が相続発生より前に亡くなっていた場合に行われると解説しましたが、実はそれ以外にも代襲相続が行われるケースがあります。
2つのケースを解説していきましょう。
① 相続排除
「相続排除」とは、相続人がある事由に当てはまった場合に被相続人が相続人の相続権を失わせる制度です。- 被相続人に虐待をした
- 被相続人に重大な侮辱を加えた
- その他の著しい非行があった
このような事由に当てはまる相続人がいて、被相続人が相続させないと決めた場合、生前に家庭裁判所に申し立てるか遺言書に遺しておくことで相続人から排除することができるのです。
そして「相続排除」によって被相続人の子どもが相続権を失った場合、その子どもの子、被相続人にとっての孫が代襲相続することができます。
② 相続欠格
「相続欠格」は、以下の事由に当てはまる相続人が自動的に相続人ではなくなる制度です。- 被相続人や他の相続人を殺害または殺害しようとして刑に処された
- 被相続人が殺害されたことを知っていたにもかかわらず告発または告訴しなかった
- 詐欺や脅迫によって被相続人が遺言を撤回や取り消し、変更するのを妨害した
- 詐欺や脅迫によって被相続人に遺言を撤回や取り消し、変更させたりした
- 被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した
このような事由に当てはまると相続人となる資格を失う「相続欠格」になります。そして、「相続欠格」によって被相続人の子どもが相続できなくなった場合も、代襲相続によりその子どもの子(被相続人の孫)が相続することができるのです。
なお、相続排除や相続欠格とは異なり、「相続放棄」では代襲相続は発生しません。相続人が相続放棄をして自分の子どもに代襲相続をさせることはできないということです。
2、代襲相続人の相続分・遺留分
代襲相続人の相続分や遺留分は本来の相続人の相続分や遺留分と違うのでしょうか?詳しくみていきましょう。
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(1)代襲相続人の相続分
遺言書がない場合に相続をどのように分けるかは、法律に定められています。法定相続割合は以下のとおりです。
- ① 配偶者と子どもが相続人のケース:配偶者と子どもで2分の1ずつ
- ② 配偶者と直系尊属(両親や祖父母)が相続人のケース:配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1ずつ
- ③ 配偶者と兄弟姉妹が相続人のケース:配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
このように法定相続人の相続分については法律で定められており、代襲相続人もこれにならいます。
たとえば、亡くなったAさんには妻と子ども2人(B、C)、Bの子ども(Aさんの孫)が2人いて、遺産は1000万円だったとしましょう。
法定相続分は妻が2分の1、子どもが2分の1なので、本来であれば妻500万円、子どもBCがそれぞれ250万円(合計500万円)相続します。
子どもBがAさんより前に亡くなっていてBの子ども(Aさんの孫)が代襲相続人になったとしても相続分は変わりません。
つまり、Bの子ども2人はBの法定相続分250万円を相続することになり、それぞれ125万円を相続するということになります。 -
(2)代襲相続人の遺留分
相続には「遺留分」というものがあります。「遺留分」とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限確保されている取り分のことです。たとえ遺言書に「妻に全財産を相続させる」と書かれていた場合であっても、他の相続人は遺留分として補償されている分の財産を相続することができます。
代襲相続人も、本来の相続人に認められている遺留分を相続することが可能です。ただし、被相続人の兄弟姉妹は対象外のため、被相続人の兄弟姉妹の子どもが代襲相続人となった場合には遺留分は認められません。
3、孫が代襲相続する場合の注意点
孫が代襲相続をする場合の注意点について詳しくみていきましょう。
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(1)孫が未成年の場合には代理人が必要
遺産分割協議は法律行為のため、未成年者だけで行うことができません。そのため、代襲相続人である被相続人の孫が未成年の場合、孫だけでなく代理人が遺産分割協議に参加する必要があります。
代理人がいない状態で遺産分割協議が成立してたとしても、やり直しが必要になってしまうため、孫が未成年かどうか、未成年の場合、誰が代理人になるのかを遺産分割協議の前に必ず確認しましょう。 -
(2)手続きで必要になる書類が増える
本来の相続人ではなく代襲相続人が相続する場合、相続の手続きをするときに必要な書類が増えます。自身が代襲相続人であると証明するために、必ず用意しましょう。
- ① 本来相続するはずだった子どもの出生から死亡までの戸籍謄本
- ② 代襲相続人である孫の戸籍謄本
4、代襲相続で相続が複雑になったら弁護士にご相談を
代襲相続では、必要書類が増えるだけではなく、未成年者の場合は代理人が必要となるなど、手続きが複雑になります。また、代襲相続についての知識不足によって自分に不利な内容の遺産分割協議に合意してしまったり、相続を放棄するように迫られたりするケースもあります。
弁護士に相談・依頼することで、アドバイスを受けられるだけでなく、代理人として遺産分割協議に参加し、不利な内容にならないよう交渉をしてもらうことも可能です。また遺産分割協議がまとまらず、調停になる場合にも引き続き対応してもらうこともできます。
トラブルが起きると相続の手続きもスムーズに進まなくなってしまうため、そうなる前に早めに弁護士に相談しましょう。
5、まとめ
本来相続人になるはずであった相続人が被相続人の死亡前に亡くなっていた場合や相続排除、相続欠格であった場合、被相続人の孫が代襲相続人になります。代襲相続人の相続分や遺留分は代襲される相続人と変わりません。
代襲相続人になると、遺産分割協議でのトラブルが発生するだけでなく書類や関係者も増えるため、お困りのときには是非ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています