ながらスマホで自転車事故! 罰則は? 逃走してしまったらどうなる?

2022年04月07日
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ながらスマホで自転車事故! 罰則は? 逃走してしまったらどうなる?

複数の飲食店と不特定多数の顧客をアプリで結びつけて食事を配達する「フードデリバリーサービス」の利用者が急増しています。便利なサービスが普及する一方、フードデリバリーサービスの利用者が増加したことで、配達員の交通マナーを問題視する声が取り上げられる機会も増えました。

とくに、自転車の交通マナー・ルール違反は強く批判の的となっており、全国でも多数の事故事例が報道されています。スマホのディスプレーに表示された配達の指示や地図データに気を取られて事故を起こしてしまうケースも多いようです。

「ながらスマホ」による自転車事故を起こすとどのような罰を受けるのでしょうか? ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。

1、危険な「ながらスマホ」とは?

警察・自治体からの広報やニュース番組の特集など、さまざまな場面で「ながらスマホ」の危険性が取り上げられる機会が増えています。まずは「ながらスマホ」がどのような行為なのか、なぜ「危険だ」という声が高まっているのかを確認していきましょう。

  1. (1)「ながらスマホ」の定義

    あることをしながら別のことにも手を出してしまい、注意力が散漫になってしまう状態を「ながら○○」と呼びます。

    典型的なものとして、自動車の運転中に電話をかけたり本を読んだりすることを「ながら運転」と呼んだり、音楽を聴いたりテレビを観たりしながら勉強することを「ながら勉強・ながら学習」などと呼んだりするので、日常生活のなかでも耳にする機会は多いでしょう。

    「ながらスマホ」も、スマートフォンを使いながら別のことをするという意味になりますが、とくに「運転中にスマホを操作すること」を指して呼ばれるケースが多いでしょう。

    同じように歩道などを歩きながらスマホの操作に集中してしまい、ほかの歩行者にぶつかってしまったり、転倒・転落などで怪我をしてしまったりする危険な行為を「歩きスマホ」と呼びます。

  2. (2)自転車のながらスマホが引き起こしている現状

    一般社団法人日本損害保険協会の調査によると、交通事故件数に占める自転車事故の割合は増加傾向です。令和2年中の自転車事故は6万7673件で、交通事故全体の21.9%でした。平成28年時点では18.2%で、年々、1%程度の上昇が確認できます。

    平成29年には神奈川県内で自転車の運転中に左手でスマホを操作しながら右手には飲料の容器をもち、左耳にイヤホンを装着して音楽を聴いていた大学生が歩行中の高齢者と接触し、相手を死亡させて有罪判決を受けた事例もあります。

    全国でも同様に自転車のながらスマホが原因となった交通事故の事例が数多く報道されており、大きな社会問題として注目されている状況です

2、自転車のながらスマホで問われる罪と罰則

ながらスマホで処罰されるのは、自動車やバイクだけではありません。道路交通法の解釈では自転車も「車両」に含まれるため、自転車のながらスマホで処罰されるおそれもあります。

自転車のながらスマホで問われる罪や罰則を確認しておきましょう。

  1. (1)車・バイクなどに対する罰則

    自動車・自動二輪車・原動機付自転車の運転中にスマホを使用すると、道路交通法第71条第5の5号違反となります。

    違反となるのは、次の2つの行為です。

    • 通話
    • 画像注視


    スマホを手に持って耳にあて、通話している状態はもちろん、手に持っていなくてもホルダーに設置してスマホの画面を注視している状態も違反となります。

    以前は5万円以下の罰金とされていましたが、令和元年12月に施行された道路交通法の改正によって、6か月以下の懲役または5万円以下の罰金へと厳罰化されました。反則金も普通車の場合は6000円が1万8000円に、違反点数は1点が3点に引き上げられています。

    ただし、これは道路交通法第71条第5の5号に明記されているとおり「自動車または原動機付自転車」に対する罰則であり、自転車はこれに含まれません。

    なお、市街地での移動に便利だと人気が高まっている「電動キックボード」は、定格出力0.60キロワットを超える原動機が搭載されているものは原動機付自転車に含まれます。ヘルメットの装着や前照灯・後写鏡の装備、自賠責保険の加入、ナンバープレートの標示などの義務があるうえに、ながらスマホをしていれば取り締まりの対象となるため注意が必要です。

  2. (2)公安委員会の遵守事項義務に違反する

    自動車などの運転中におけるながらスマホは道路交通法第71条第5の5号違反として罰せられますが、自転車はこの規定による処罰対象に含まれていません。
    では「自転車のながらスマホは処罰されない」のかというと、それは間違いです

    道路交通法第71条第6号には、公安委員会が道路における危険を防止し、そのほか交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項の遵守義務が定められています

    大阪府公安委員会が定める「大阪府道路交通規則」の第13条には「携帯電話用送致を手で保持して通話し、または画像表示用送致を手で保持してこれに表示された画像を注視しながら自転車を運転しないこと」という規定があるため、自転車のながらスマホも処罰の対象です。
    道路交通法第120条1項9号の規定に従い、5万円以下の罰金が科せられます。

3、ながらスマホで自転車事故を起こしたときに問われる責任

ながらスマホは、周囲への注意力を低下させる危険な行為であり、交通事故を引き起こす原因にもなります。自転車のながらスマホで事故を起こしてしまうと、どのような責任を問われるのでしょうか?

  1. (1)重過失致死傷罪に問われる

    自動車・バイクなどでのながらスマホで交通事故を引き起こすと、道路交通法違反のうち「携帯電話の使用等(交通の危険)」にあたります。

    法改正によって罰則が強化されており、単なる交通違反として処理されず1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることになります。

    ただし、これはあくまでも道路交通法第71条第5の5号の適用をうける自動車・自動二輪車・原動機付自転車の場合に限られる規定です。自転車の場合は道路交通法における「携帯電話の使用等(交通の危険)」ではなく、刑法第211条の「重過失致死傷罪」に問われます。

    重過失致死傷罪とは、重大な過失によって人を死傷させた場合に適用される犯罪です。「重大な過失」とは、注意義務違反の程度が著しい場合を指し、わずかにでも注意を払っていれば重大な結果が発生することを容易に予想できるのに、あえてその結果を発生させてしまった状況を指します。

    ながらスマホによる自転車の運転は、まさに「重大な過失」と認められる状況です。先に挙げたながらスマホによる自転車事故の事例でも、歩行者を死亡させてしまったため重過失致死罪が適用されました。

    重過失致死傷罪の法定刑は5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
    法定刑の重さをみれば、自動車・バイクのながらスマホによる交通事故よりも厳しい刑罰が予定されています。

  2. (2)被害者への賠償

    交通事故の加害者は、負傷した被害者の治療費、死傷者や家族が受けた精神的苦痛に対する慰謝料、治療期間中の収入減少の補填、事故に遭わなければ得られるはずだった将来の収入など、さまざまな賠償責任を負います。

    これらの賠償責任は民事的なものであり、法的な手続きに従って刑事罰を受けたとしても責任を免れるわけではありません。民事的な責任と刑事的な責任はまったく別のものです。

  3. (3)逃走すると「ひき逃げ」が成立するのか?

    道路交通法の解釈によると、自転車は「軽車両」に分類されます。交通標語などでも「自転車は車の仲間」といわれていますが、法律の定めにおいても「車両」に含まれているのです。

    道路交通法第72条には「交通事故の場合の措置」が定められており、交通事故の当事者は、ただちに車両の運転を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止するなど必要な措置を講じる義務を負います。負傷者の救護を怠れば「ひき逃げ」です。

    すると、たとえ自転車であっても交通事故を起こして負傷者の救護をしないままその場から立ち去ればひき逃げになるように思えますが、ひき逃げに対する罰則を定めた道路交通法第117条1項には「軽車両を除く」と明記されています。

    つまり、自転車の場合は自動車のように「ひき逃げ」として厳しく罰せられる規定は存在しません。

    ただし、被害者に死傷の結果が発生していれば刑法の重過失致死傷罪の適用は免れず、その場から逃走していると判断されれば逮捕の要件である「逃亡・証拠隠滅を図るおそれ」があると判断されやすくなるでしょう。

    民事・刑事の両面で厳しい責任を問われるため、その場から逃走したくなるかもしれませんが、逮捕の危険性が高まるということを考えればただちに負傷者を救護し、警察に事故発生を報告するべきです

4、ながらスマホで自転車事故を起こしたら弁護士へ相談を

ながらスマホで自転車事故を起こしてしまったときは、ただちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。

  1. (1)代理人として被害者との示談交渉を進める

    たとえ自転車による交通事故でも、相手に死傷の結果が発生していれば刑事事件として扱われます。厳しい刑罰が規定されているため、ただちに弁護士を代理人として被害者との示談交渉を進めましょう。被害者との示談が成立し示談金を支払えば、民事的な賠償を果たしたことになります。

    ただし、とくに加害者側の過失が大きいながらスマホが原因の事故では、過大な賠償金を請求されるおそれもあるため、個人での交渉は危険です。事故の内容や当時の状況などに照らして適切な賠償金を決めるためには、数多くの交通事故トラブルを解決した実績をもつ弁護士の知識と経験が欠かせません

    被害者のなかには、加害者に対して強い怒りや不信感をもち、示談交渉に応じない者も少なからず存在します。弁護士が代理人を務めることで、被害者の警戒心を解き、円滑な示談交渉が進む可能性を高めます。

  2. (2)厳しい処分を回避する

    ながらスマホによる自転車事故は、単なる「事故」ではなく「事件」として刑事的に処理されます。懲役・禁錮の判決を受ければ刑務所に収監されて長期にわたり社会から隔離されるおそれもあるため、厳しい処分はできる限り避けたいものです。

    弁護士に刑事弁護を依頼することで、警察の取り調べに対するアドバイスや逮捕・勾留を受けた場合の早期釈放を目指した活動が期待できます。また、検察官が起訴に踏み切った場合は、加害者にとって有利な事情を示して情状酌量による減軽を目指す、被害者の過失を主張するといった処分の軽減を目指した活動も可能です。

5、まとめ

フードデリバリーサービスの普及はめざましく、消費者としても、働き手としても、その存在は大きなものになりつつあります。

一方で、自転車による交通事故の増加に拍車をかける要因としても問題視されており、今後もますます厳しい目が向けられる対象となるのは確実です。自転車の「ながらスマホ」による交通事故を起こすと、厳しい刑罰だけでなく多額の賠償責任も追及されることになるので、フードデリバリー業界で働いている方は「トラブルが起きたら弁護士に相談する」という心構えをもっておいたほうがよいでしょう

「ながらスマホ」による自転車事故を起こしてしまい、刑罰や被害者への賠償に不安を感じているなら、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスにご相談ください。刑事事件・交通事故・民事トラブルの解決実績を豊富にもつ弁護士が、円満解決に向けて全力でサポートします。

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