破産したいと思ったらするべきこと|自己破産の流れや要する期間は?
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- 破産したい
2021年に埼玉県所沢市に寄せられた市民相談の総数は2891件でした。そのうち金銭に関する相談は234件でした。相談には借金や自己破産に関するものも含まれていたと推測されます。
自己破産は、財産が処分されてしまうものの、債務全額が免除される強力な手続きです。借金の返済などが苦しく、自己破産したいと思った場合には、進め方や注意点などについて弁護士にご相談ください。
今回は、自己破産したいと思った場合に知っておくべき基礎知識などについて、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和3年統計書」(所沢市)
1、自己破産とは
「自己破産」とは、債務者の財産を処分して債権者への配当を行った後、残った債務全額を免除する裁判手続きです。
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(1)自己破産の申立て要件
自己破産は、「支払不能」の状態にある場合に申し立てることができます(破産法第15条第1項)。
「支払不能」とは、支払能力を欠くために、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態※をいいます(同法第2条第11項)。- ※ 一般的に弁済できない:(一部のみではなく)ほとんどの債務を弁済できないこと
- ※ 継続的に弁済できない:債務の滞納が長期間続いていること
さらに、破産手続きの費用を予納すること、申立てが不誠実にされたものでないことが、破産手続きの開始要件とされています(同法第30条第1項)。
上記以外には、自己破産の申立て要件は特に定められていません。収入や職業なども問われず、債務の支払いが困難になった方は幅広く自己破産を申し立てることができます。 -
(2)自己破産のメリット
自己破産のメリットは、最終的に債務全額が免除されることです。
他の債務整理手続きでは、債務の減額は認められても免除は認められないため、自己破産はもっとも強力な債務整理手続きといえます。
また、収入や職業にかかわらず利用できる点も、自己破産のメリットです。借金の返済などに苦しむ方にとって、自己破産は最後のセーフティネットとなります。 -
(3)自己破産のデメリット
自己破産のデメリットは、債務者の財産が処分されてしまう点です。生活に必要な最低限の財産は残すことができますが、家などの高額資産は処分されてしまいます。
また、士業や警備員など一部の職業については、破産手続開始の決定から免責許可決定の確定まで資格制限が発生し、業務を行うことができなくなります。資格制限に該当する職業に就いている方は、自己破産による仕事への影響に十分ご注意ください。
さらに、自己破産を申し立てた事実は、個人信用情報機関に「事故情報(異動情報)」として登録されます。
これは俗に「ブラックリスト入り」と呼ばれており、登録から5年または10年間(個人信用情報機関によって異なります)、新規ローンの借り入れやクレジットカードの利用などができなくなる点に注意が必要です。
2、自己破産したいと思ったらやるべきこと
自己破産によって借金などの負担を免れたいと考えている方は、以下の対応を行って今後の手続きの進め方を検討しましょう。
- ① 債務の状況を確認する
- ② 自己破産のデメリットについて検討する
- ③ 弁護士に相談する
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(1)債務の状況を確認する
まずは、どの債権者に対していくらの債務があるのか、債務の状況を整理する必要があります。滞納が発生している場合には、その状況もまとめておきましょう。
債務の金額や滞納状況などに鑑み、今後期限どおりに債務を支払っていける見込みがない場合は、積極的に自己破産を検討すべきです。ただし、滞納状況がそれほど深刻でない場合には、自己破産以外の方法(任意整理・個人再生)による債務整理も考えられます。
いずれにしても、債務の状況を整理して正しく把握することが、今後どのように債務整理を進めるかを判断する上で大切になります。 -
(2)自己破産のデメリットについて検討する
前述のとおり、自己破産には以下のデメリットが存在します。
- 財産が処分されてしまう
- 一部の職業について資格制限が発生する
- 個人信用情報機関に事故情報(異動情報)が登録される
それぞれのデメリットにつき、ご自身の状況に照らしてどのような影響が生じるかを検討しましょう。悪影響が大きすぎるようであれば、自己破産を取りやめるか、または別の方法により債務整理を行うことも選択肢に入れることをおすすめします。
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(3)弁護士に相談する
本当に自己破産をすべきか否か、どのように手続きを進めるのがよいかについては、一般の方には判断が難しい部分もあろうかと思います。
また、実際に自己破産を申し立てることになった場合、裁判所への申立てやその後の対応を自力で行うのは大変です。
そのため、自己破産したいと少しでも考え始めた場合には、早い段階で弁護士へ相談しましょう。弁護士はそれぞれの状況をヒアリングした上で、債務整理手続きの選択や今後の進め方についてアドバイスします。
3、自己破産手続きの種類
自己破産手続きは、「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類に大別されます。管財事件はさらに、「特定管財」と「少額管財」に分かれます。
破産財団が破産手続きの費用を支弁するのに不足する場合、裁判所は破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定を行います。これを「同時廃止」といいます。
同時廃止事件では、債務者財産の換価・処分や債権者への配当は行われません。
② 管財事件
債務者財産の換価・処分や債権者への配当を行う、自己破産手続きの原則的な形態です。裁判所によって破産管財人が選任され、換価処分や債権者配当の手続きを行います。
(a)特定管財
破産管財人が通常どおり業務を行う、管財事件の原則的な形態を「特定管財」といいます。裁判所に納める予納金が高額になるのが特徴です。債務者本人による破産申立ての場合は、特定管財となります。
(b)少額管財
破産管財人の業務を簡略化する代わりに、予納金を低額(20万円程度)に抑える特例的な運用です。弁護士が代理人として破産申立てを行う場合、少額管財となることが多いです(一律で特定管財としている裁判所もあります)。
特に管財事件となる場合は、少額管財によって予納金額を抑えられる可能性がある点が、弁護士に依頼するメリットのひとつです。
4、自己破産手続きの流れと所要期間
自己破産手続きの流れと所要期間は、同時廃止事件か管財事件かによって大きく異なります。
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(1)同時廃止事件の流れと所要期間
同時廃止事件の流れは、大まかに以下のとおりです。
① 申立て準備・破産手続開始の申立て
債務の調査などを行った上で、申立書類の準備を進めます。準備が整った段階で、債務者の住所地などを管轄する裁判所に書類を提出し、破産手続開始の申立てを行います。
② 破産手続開始・廃止の決定
裁判所は、破産手続開始の要件(支払不能など)を満たしていると認めた場合、破産手続の開始決定と廃止決定を同時に行います。同時廃止事件の場合、債務者財産の換価・処分や債権者への配当は行われません。
③ 免責審尋
破産手続廃止の決定から2~3か月後、裁判所によって免責審尋が行われます。免責審尋では、免責不許可事由(破産法第252条第1項)の存否や裁量免責(同条第2項)の可否などが審査されます。
④ 免責許可の決定・確定
免責不許可事由がない場合、または裁量免責が適当と判断した場合には、裁判所は免責許可の決定を行います。
免責許可の決定は、2週間の即時抗告期間を経て確定し(破産法第9条)、債務全額が免責されます(公租公課など、免責されない債務もあります)。
同時廃止事件の所要期間は、申立て準備に3~4か月程度、申立てから免責許可の確定までは2~3か月程度です。
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(2)管財事件の流れと所要期間
管財事件の流れは、大まかに以下のとおりです。
① 申立て準備・破産手続開始の申立て
同時廃止事件と同様です。
② 破産手続開始の決定
管財事件では、破産手続開始の決定時に破産管財人が選任されます。破産管財人は、債務者財産の換価・処分や債権者への配当、免責に関する調査などを行います。
③ 破産管財人との面談
今後の手続きの進め方について、債務者と破産管財人が面談を行います。
④ 債務者財産の換価・処分
破産管財人によって債務者財産が換価・処分され、債権者への配当原資に回されます。
⑤ 債権者集会・免責審尋
債務者財産の換価・処分に関する状況などを、債権者集会において破産管財人が債権者へ報告します。
管財事件における免責審尋は、債権者集会の直後に行われるのが通例で、破産管財人によって免責に関する意見が述べられます。
⑥ 債権者への配当
配当原資がある場合には、債権者への配当が行われます。配当原資がない場合には、裁判所が破産手続廃止の決定を行います(破産法第217条第1項)。
⑦ 免責許可の決定・確定
同時廃止事件と同様です。
管財事件の所要期間は、申立て準備に3~6か月程度、申立てから免責許可の確定までは4か月~1年程度です。
5、まとめ
自己破産は、借金の返済などに苦しむ方にとって最後の救済手段となる、強力な債務整理手続きです。その一方で、自己破産にはデメリットもあるため、注意点や進め方などについて、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、自己破産を含む債務整理に関するご相談を随時受け付けております。借金の返済負担を重く感じている方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています