不倫の誓約書を作るには? 入れるべき内容と注意点
- 不倫
- 不倫
- 誓約書

令和2年度の司法統計によると、婚姻関係事件(離婚調停)の申し立て理由において、「異性関係」は、妻が挙げた理由で5位、夫は3位と、多くの人が挙げた理由になっています。
不倫が発覚した場合に離婚を決断する方もいれば、一方で、関係を修復して夫婦関係を継続することを選択する方もいます。
配偶者の不倫後も夫婦関係を続けると決心した場合、不倫の再発を防止するために不倫の誓約書を作成するのが有効です。不倫の誓約書を作成する際に入れるべき内容と注意点について、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。
1、なぜ不貞行為があった場合に誓約書が必要なのか
不貞行為が発覚した場合には、誓約書を書かせるという対応がなされますが、なぜ誓約書が必要になるのでしょうか。
-
(1)誓約書と示談書の違い
誓約書と示談書は、いずれも当事者が守るべき義務が記載された書面であるという点で共通しています。
しかし、誓約書は、誓約書の作成者のみが署名押印をする文書ですので、誓約書に記載された内容を守らなければならないのは、誓約書を作成した方のみです。
これに対して、示談書は、2人以上の当事者がお互いに守るべき内容を記載し、署名押印をする文書ですので、示談書に記載された内容は、署名押印をした複数の当事者を拘束することになります。
このように、作成に関与する人数がひとりか複数かで誓約書と示談書が使い分けられるのが一般的です。 -
(2)誓約書が必要な理由
不倫をされた場合に、誓約書が必要な理由としては、以下のことが挙げられます。
① 不倫をやめさせる
不倫をされたものの婚姻関係を継続するという場合には、配偶者に不倫をやめてもらわなければ関係の修復はできません。そこで、誓約書に「不倫相手との関係を解消し、今後接触しない」ことを記載することによって、不倫をやめさせる効果が期待できます。
また、再度不倫をした場合のペナルティも記載しておくことによって、「約束を守らなければいけない」というプレッシャーを与えることができます。
② 慰謝料を請求する際の証拠にする
配偶者との離婚の可能性がある場合には、配偶者が不倫をしたという証拠を誓約書によって残しておくことで、将来慰謝料請求をする場合の証拠にすることができます。
また、配偶者と離婚をしない場合でも不倫相手に対して慰謝料請求をすることができますが、誓約書があれば不倫相手への慰謝料請求の際の証拠に使うこともできます。
③ 再度不倫をした場合に有利になる
不倫の誓約書を作成したとしても、不倫をやめられず再び不倫をしてしまうこともあります。誓約書において、再度不倫をした場合のペナルティとして具体的な慰謝料額を定めておくことによって、誓約書に書かれた慰謝料を支払ってもらうことが可能になります。
慰謝料請求では慰謝料額が争われることが多いですが、あらかじめ慰謝料額を定めておけば、そのようなリスクを回避することができます。
ただし、「慰謝料として1億円を支払う」などあまりにも法外な金額にしてしまうと、慰謝料の合意が無効になる可能性もありますので注意が必要です。
2、不倫の誓約書を書かせる場合の注意点
不倫の誓約書を書かせる場合には、以下の点に注意が必要です。
-
(1)「書かなければ会社にバラす」などの脅迫行為はしてはいけない
不倫の誓約書を書いてもらうことで、離婚や慰謝料請求で有利になるからといって、無理やり誓約書を書かせてはいけません。
「誓約書を書かなければ会社にバラす」などと脅して、誓約書を書かせたとしても、民法上の強迫にあたり取り消されてしまいます(民法96条)。場合によっては、刑事上の脅迫罪や強要罪が成立し、刑事罰を受けるリスクもありますので注意しましょう。 -
(2)感情に任せて相手に暴行を与えてはいけない
信頼していた配偶者に裏切られると許せないという思いから相手に対して暴力を振るってしまうこともあります。しかし、相手に対して暴力を振るうと暴行罪にあたり、事案によっては警察に逮捕されてしまう可能性もあります。
離婚を検討している場合にも暴力を振るったという事情が不利に働くことになりますので、誓約書を書いてもらうときには冷静に対応することが大切です。 -
(3)公序良俗に反する内容を盛り込まない
誓約書の内容が公序良俗に反するものであった場合には、その内容が無効になってしまいます(民法90条)。公序良俗とは、公共の秩序を守るための社会的な常識を指します。
そのため、誓約書を作成する場合には、公序良俗に反する内容にならないように注意が必要です。
なお、公序良俗に反する内容例としては、以下のものが挙げられます。- 1億円など不当に高額な慰謝料
- 今後、配偶者以外の異性との接触を一切禁止する
- 常に居場所がわかるようにするためにGPSを持ち歩く
3、誓約書に入れるべき内容
誓約書を作成する場合には、以下のような内容を入れるようにしましょう。
-
(1)不倫の事実関係
配偶者が不倫をした証拠にするために、不倫の事実関係を具体的に記載します。記載すべき内容としては、誰が、誰と、いつ、どこで、どの程度不貞行為をしたのを特定できるような内容です。
【具体例】
乙は、令和○年〇月から令和○年〇月までの間、○○(不倫相手の名前)と継続的に不貞行為をしたことを認める。 -
(2)不倫相手との関係の解消
不倫をした配偶者と夫婦関係を継続する場合には、不倫相手との関係を解消してもらう必要があります。不倫相手との関係を解消するためには、単に関係を解消すると記載するのではなく、不倫相手と接触する可能性のある連絡手段を具体的に上げて、それらを禁止するのが有効です。
【具体例】
乙は、○○(不倫相手の名前)との関係を解消し、面会、電話、メール、LINE、SNSなどによる連絡や接触をしないことを約束する。 -
(3)慰謝料の支払い
配偶者との関係をやり直す場合には、慰謝料請求をしない場合が多いですが、離婚を前提としている場合には、配偶者が支払う不倫慰謝料についての条項を設けます。不倫慰謝料についての条項では、慰謝料の金額、支払い方法、支払い時期などを具体的に特定して記載します。
【具体例】
乙は、甲に対し、令和○年〇月〇日限り、不貞行為の慰謝料として金○○万円を支払う。 -
(4)違反した場合のペナルティ
不倫の再発を防止するためには、再度不倫をした場合のペナルティを定めておくことが有効です。
ペナルティとしては、慰謝料の支払いを定めることが多いですが、その際の金額があまりにも法外なものになると無効になる可能性がありますので注意しましょう。【具体例】
乙は、甲に対して、乙が再度不貞行為をした場合には、不貞行為の慰謝料として金○○万年を支払う。
4、不倫の誓約書を弁護士に相談するメリット
不倫の誓約書の作成をお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
-
(1)法的観点からアドバイスをもらうことができる
不倫の誓約書を作成する場合には、法的に有効なものを作成しなければ意味がありません。曖昧な内容であったり、必要な記載が漏れてしまったりしていては、誓約書を作成したとしても期待していた効果を得ることができません。
弁護士であれば、誓約書の作成に精通していますので、法的観点から有効な誓約書になるようにアドバイスをすることが可能です。誓約書の内容は、人それぞれですので、市販のテンプレートではなく、弁護士に相談をしてオーダーメードの誓約書を作成することが大切です。 -
(2)相手との交渉を任せることができる
誓約書を作成する場合には、誓約書を作成する本人がその内容に納得していなければなりません。誓約書の作成過程で暴行や脅迫があると、誓約書の内容が取り消されてしまうおそれもありますので慎重に進める必要があります。
しかし、当事者同士の話し合いでは、不倫によって裏切られたという思いからどうしても感情的になってしまい冷静に話し合いを進めることができません。
弁護士であれば本人に代わって相手と交渉をすることができますので、冷静な話し合いにより、有利な条件で誓約書を書いてもらえる可能性が高くなります。
相手との交渉にストレスを感じる場合には、弁護士に交渉を任せるとよいでしょう。 -
(3)離婚をする場合の条件をアドバイスしてもらえる
不倫をした配偶者との離婚か復縁かで悩んでいる場合には、どのような条件で離婚が可能であるかを知ることによって、今後の方針が明確になることがあります。
離婚をする際には、親権、養育費、財産分与、慰謝料などさまざまな条件を決めることになりますが、専門的な知識がなければ各離婚条件の適正な内容を把握することができません。
経済的に不安があり離婚に踏み出せないという方も適正な離婚条件をしることで、離婚を決断できる可能性もありますので、まずは弁護士にご相談ください。
5、まとめ
不倫誓約書を作成することによって、配偶者による不倫の再発の防止、慰謝料請求のための証拠の確保、離婚時の交渉を有利に進めることができるなどのメリットがあります。
離婚をする場合にも復縁する場合にも不倫の誓約書は重要となりますので、法的観点から問題のない誓約書を作成するためにもまずは、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士までご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています