養育費請求調停は弁護士なしでも可能? 弁護士に依頼するメリットとは

2024年04月16日
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養育費請求調停は弁護士なしでも可能? 弁護士に依頼するメリットとは

2020年の司法統計によると、さいたま家庭裁判所には779件の養育費請求調停の申し立てがありました。「養育費が支払われなくなった」「離婚前に取り決めしたはずなのに払ってくれない」など養育費に関係するトラブルのケースはさまざまです。

養育費は、子どもが健やかに育つための大切なお金です。未払いや滞納には、養育費調停請求という法律上の制度を利用して申し立てることが可能です。

今回は、養育費請求調停の基礎知識、弁護士に依頼せずに行う方法、弁護士に依頼した際のメリットについてベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。

1、養育費請求調停とは

養育費請求調停とは、離婚後、夫婦間で養育費を決定できなかった場合に、家庭裁判所の調停委員立ち会いのもと、お互い納得のできる養育費を決めるものです。養育費を決めていたにもかかわらず、支払われないときにも申し立てが可能です。

  1. (1)養育費請求調停で決めること

    養育費請求調停では、大きく下記の4つのことについての話し合いをします。

    • ① 養育費の支払い
    • ② 支払金額
    • ③ 支払期間
    • ④ 支払方法


    まず、そもそも養育費を支払うのか支払わないのかという点について話し合いをします。支払うことが決まれば、金額や期間などの条件について話し合いを進めることになります。養育費の金額は、一般的に「養育費算定表」を参考に決めます。また一括で支払うのか、それとも月々の分割で支払うかなど詳しい支払い方法についても詰めていきます。

    もし、話し合いで決着がつかず養育費請求調停が不成立となっても、審判に進めることで裁判官が養育費の内容等を決定してくれます。

  2. (2)養育費調停の種類(増額・減額)

    養育費に関する調停は、養育費請求調停のほかに、養育費増額調停と養育費減額調停があります。

    ・養育費増額調停
    養育費増額調停とは、すでに決まっている養育費の内容に対して、話し合い当時と状況が変わったことを理由に増額を求めるときに申し立てます。

    たとえば、子どもが私立の学校に進学した、高額な治療費がかかる病気になった、というよう事情の変化です。そのほかには、養育費を受け取る側の収入の減少や支払う側の収入の増加、物価の上昇など親や社会の変化の事情もあります。もっとも、離婚時に一括で養育費の支払いを受けた場合には、養育費増額調停が認められないケースが多くなります。

    ・養育費減額調停
    養育費減額調停とは、支払う側の事情の変化によって、養育費の支払いが難しくなった場合に減額を求めるための申し立てです。主な事情としては、失業や収入の減少、再婚などが挙げられます。

    また、再婚相手と連れ子が養子縁組をした場合、再婚の相手方が子どもの養育をするため、減額が認められることがあります。ただし、親権者が再婚したとしても養育費を支払う親の義務がなくなるわけではありません。つまり、「再婚=養育費の支払いがなくなる」というわけではないので注意が必要です。


    なお、増額も減額もお互いにの話し合いで合意できれば、調停をする必要はありません。

2、養育費請求調停は弁護士なしでもできる?

弁護士に依頼しなくとも養育費請求調停をすることができます。ただし、自分で養育費請求調停を行う場合には証拠集めや相手との交渉があるため、自分で申し立てるときに大変な点を紹介します。

  1. (1)養育費請求調停は弁護士なしでも申し立てできる

    弁護士に依頼せずとも養育費請求調停を申し立てることができます。

    しかし、自分で申し立てる場合には、すべての手続きを自分で行う必要があり、時間や労力がかかります。たとえば、4章で後述するように申し立てには戸籍謄本や給与明細など複数の書類が必要です。養育費請求調停は、裁判所で行う法的な手続きであるため、適切な書類を準備しなければなりません。

    また、相手が給与や資産状況を明らかにしない場合は、弁護士照会により、企業や金融機関に情報開示を求めていく必要がありますが、これは弁護士のみが可能な調査です。それ以前に、どのような証拠を集める必要があるのかわからないこともあるでしょう。

    ケースによっては自分で申し立てることは、なかなか難しいものであるといわざるを得ません。

  2. (2)養育費請求調停を弁護士に依頼するメリット

    弁護士に依頼する一番のメリットは、すべての手続きを一任できるということです。

    たとえば、申立書の作成をしてもらうことができます。また、どのような証拠が必要かについてもアドバイスをもらうことができ、相手が財産隠しをした場合でも弁護士照会によって証拠収集できる可能性があります。さらに調停の際にも弁護士が立ち会うことや、代理人として話し合いを進めることも可能なため、心身共に負担が軽減できるでしょう。

    万が一、養育費の不払いが起きたとしても同じ弁護士に相談することでスムーズな対応が期待できます。養育費がもらえず困っている状況であるからこそ、弁護士に依頼して心身ともに負担を軽減することをおすすめします

3、養育費請求調停を進める際のポイント

養育費請求調停を進める際のポイントがあります。自分で調停しようと思っている方は、しっかりと読んで準備するようにしましょう。

  1. (1)養育費の相場を確認する

    まず、裁判所のホームページで養育費の相場について調べてみましょう。裁判所のホームページには、「養育費・婚姻費用算定表」が掲載されています。算定表から、子どもの人数や年齢に合わせた相場を知ることができます。

    たとえば、子どもが2人で、第1子が15歳以上、第2子が0~14歳の場合にはそれぞれの年収に応じて下記のようになります。

    義務者(支払う側)の給与 権利者(もらう側)の給与 相場
    250万円 200万円 2~4万円
    400万円 200万円 4~6万円
    800万円 200万円 12~14万円
    1000万円 200万円 16~18万円

    上記の表のように年収に応じて養育費の相場が増えます。

    ただし、権利者の給与(年間収入)が上がった場合には、権利者の収入だけで子どもの監護が可能になるので、年収の増加に比例して、養育費は減少します。加えて、給与所得の場合と個人事業主などの自営業の場合では算定が異なるため、ホームページで現状に合わせた相場を調べるようにしましょう。

  2. (2)現在の状況から具体的な金額を算出する

    次に現在の状況から請求する具体的な養育費を算出してみましょう。先ほどみた「養育費・婚姻費用算定表」の金額はあくまで相場です。そのため、実際の状況に合わせて算出し請求する必要があります。

    まず、子どもの人数と年齢で相場を知り、その後、学費や教育費などを計算します。また、子どもが経済的に不利な状況とならないように習い事や生活必需品の購入費などの金額も具体的に算出しましょう。

    注意点として、養育費はあくまで子どもの監護のためのお金であるため、監護親が贅沢するための金額を請求できるものではありません。子どもの現在と将来を考えて、具体的な金額を考えることが重要です。

  3. (3)請求金額の根拠となる証拠を集める

    請求する養育費の具体的な金額を決めたら、次にするべきことは根拠となる証拠を集めることです。

    養育費請求調停では、お互いの主張や提出する証拠に基づいて養育費の金額等を決めることになります。たとえば、自分の収入を証明するために源泉徴収票や相手の源泉徴収票があれば、「相手はこんなに稼いでいて、私はこれしか稼ぐことができていないのに養育費がこの金額しか支払われていない」という主張が正当性を持つことになります。また、相場より高い養育費を請求するときには、子どもの学費が書かれている学校のパンフレットや学費の領収書などがあると効果的です。

    このように、調停では証拠によって正当性がある主張をすることが重要です。

  4. (4)感情的にならずに調停委員を味方にする

    調停委員は、男女各1名ずつで、弁護士や医師など地域活動を行ってきた民間から選出されます。話し合いが公平に進むよう夫婦の間を取り持つ仲介者であり進行役ですが、養育費請求調停では、当事者が感情的になってしまい、協議が進まないことも少なくありません。

    調停委員を味方につけ自分の主張を納得してもらうためには、感情的にならず、適切な証拠に基づいて、しっかりと主張することが肝心です。どのような主張が効果的かわからない、うまく主張できるか自信がない場合は、離婚問題の解決実績がある弁護士にアドバイスを求めると安心です。

4、養育費請求調停の流れ

実際に養育費請求調停の流れはどのように進むのか、事前に確認しておきましょう。

  1. (1)家庭裁判所に申し立てる

    養育費請求調停は、家庭裁判所で申し立てる必要があります。申し立てる裁判所は、相手の住所を管轄する家庭裁判所か夫婦で話し合って決めた家庭裁判所です。

    申し立てるためには、下記の書類が必要になります。

    • ① 申立書およびその写し 各1通
    • ② 子どもの全部事項証明書または戸籍謄本
    • ③ 申立人の収入に関する書類:給与明細・源泉徴収票・確定申告書
    • ④ その他書類:子どもの学費や子どもの支出に関するもの


    申立書のダウンロードや書き方について裁判所のホームページに記載されています。

  2. (2)調停期日の決定

    家庭裁判所が提出された申立書を確認して、実際の調停期日を調整します。後日、裁判所から双方に調停期日呼出状が送られてきます。申し立てから呼出状が届くまで約2週間かかり、実際の調停までは約1か月かかります。

  3. (3)調停期日

    呼出状に記載された期日に家庭裁判所へ行き、調停が始まります。調停の回数には制限はありませんが、3~4回ほど行われることが多いです。調停では、裁判官1名、調停委員2名の計3名がお互いの話を聞き、合意に至るよう話し合いを促します。双方が納得することができれば、その期日で調停が終了しますが、納得できなければまた次の調停日を決めて解散することになります。

  4. (4)調停終了

    お互いの意見に納得でき、話し合いによって条件の合意ができれば、調停調書を作成して、無事養育費請求調停が終了します。ただし、何度話し合っても合意することができない場合には、調停不成立として終了します。その場合、調停を取り下げなければ自動的に審判へと進み、裁判官が調停で話し合った内容を考慮して養育費の金額を決定することになります。

5、まとめ

養育費請求調停は、弁護士に依頼せずとも自分で申し立てることができます。しかし、実際には法律に基づいて養育費の金額などの条件を主張しなければならず、納得いく結果を得るのが難しいことがあります。

養育費請求調停で、適切な支払いを求めるのであれば、まずは弁護士に相談するのが得策といえます。ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスでは、離婚問題や養育費問題などの解決実績がある弁護士が養育費請求調停について真摯にアドバイスいたします。養育費でお悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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