離婚調停を取り下げたらどうなる? 取り下げ後の流れと対応方法
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裁判所が公表している司法統計によると、令和2年に「さいたま家庭裁判所」が取り扱った婚姻関係事件数は、2973件でした。そのうち、836件は、取り下げによって事件が終了しています。
夫婦の話し合いによって離婚が成立しない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。しかし、離婚調停も基本的には話し合いの手続きです。裁判所に離婚調停を申し立てても、必ず離婚が成立するわけではないので注意が必要です。また、状況によっては、離婚調停の取り下げをした方がよいケースに発展することもあります。
では、どのような場合に取り下げを検討した方がよいのでしょうか。また、離婚調停を取り下げることによるデメリットはないのでしょうか。今回は、離婚調停を取り下げた場合のデメリットや取り下げを検討すべきケースなどについて、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。
目次
1、離婚調停の取り下げは申立人であればいつでも可能
離婚調停を取り下げる場合には、どのような条件・どのような方法で行うのでしょうか。以下で詳しく説明します。
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(1)離婚調停の取り下げとは
離婚調停の取り下げとは、離婚調停を終わらせて、初めからなかったものとする手続きのことをいいます。
離婚調停が終了する原因としては、「調停成立」、「調停不成立」、「調停に代わる審判」などがありますが、離婚調停の取り下げは、調停による結論を出す前に、離婚調停を終わらせるという特徴があります。 -
(2)離婚調停を取り下げる条件
離婚調停を取り下げることができるのは、離婚調停の申立てをした申立人です。離婚調停を申し立てられた相手方には、調停を取り下げる権限はありません。
また、離婚調停を取り下げることができるのは、調停による話し合いがまとまる前に限ります。調停成立、調停不成立、調停に代わる審判など何らかの結論が出た後では、離婚調停を取り下げることはできません。
このように取り下げの主体と時期については、制限がありますが、それ以外の制限はありません。そのため、離婚調停を取り下げるにあたって特別な理由は必要ありませんので、申立人が取り下げたいと思ったら、自由に取り下げをすることが可能です。 -
(3)離婚調停の取り下げの方法
離婚調停を取り下げる場合には、申立人が「調停申立て取下書」という書面を作成して、裁判所に提出する方法によって行います。離婚調停の取り下げには、費用はかかりませんので、調停申立て取下書を提出するだけで簡単に行うことができます。
なお、調停期日であれば、口頭でも取り下げをすることができます。
2、調停を取り下げた場合にデメリットはある?
調停を取り下げた場合には、以下のようなデメリットが生じますので、離婚調停を取り下げるかどうかは慎重に判断する必要があります。
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(1)話し合いがすべて無駄になる
離婚調停を取り下げた場合には、その時点で手続きがすべて終了し、離婚に関する結論が出ることはありません。
十分に話し合いを重ねて、これ以上話し合いをしても結論が出る見込みがないという場合であれば離婚調停と取り下げても問題ないでしょう。
しかし、まだ話し合いを継続している段階であれば、調停で結論が出る可能性もあります。感情にまかせて突然取り下げてしまうと、相手に対しても不信感を与えてしまい、離婚問題の解決が難しくなるおそれがあることに留意しましょう。 -
(2)再度の調停が制限される場合がある
離婚調停の申立てには、回数制限はありませんので、一度取り下げたとしても再度離婚調停を申し立てることは可能です。
しかし、離婚調停を取り下げてから間もない時期に再度離婚調停を申し立てたとしても、不当な目的で調停の申立てをしていると判断されて再度の離婚調停が認められない可能性もあります(家事事件手続法271条)。
また、再度の離婚調停の申立てが認められたとしても、何度も調停の申立てを繰り返していると調停委員の心証も悪くなってしまいますので、有利に手続きを進めることができない可能性もあります。 -
(3)調停前置を満たさない可能性がある
離婚訴訟を提起するためには、訴訟提起前に調停手続きを経ていなければなりません。これを「調停前置主義」といいます。
一般的には、離婚調停の申立てをして、離婚調停が不成立になった場合に離婚訴訟を提起しますが、離婚調停を取り下げた場合でも調停前置の要件を満たす場合があります。
調停前置が求められているのは、家庭内の問題については夫婦の話し合いによって解決することが望ましいと考えられているからですので、調停で十分な話し合いがなされたといえる場合または話し合いが成立しないことが明らかである場合には調停前置の要件を満たし、離婚訴訟の提起が可能となります。
このため、調停でまだ話し合いを継続している段階であるにもかかわらず、離婚調停を取り下げるのには注意が必要です。調停前置の要件を満たさないため、離婚訴訟をしたくても提起が認められない可能性がでてくるからです。
なお、調停前置には有効期限はありませんので、調停前置の要件を満たす取り下げであれば、何年後であっても離婚訴訟の提起が可能です。
3、取り下げを検討すべきケース
離婚調停の取り下げを検討すべきケースとしては、以下のケースが挙げられます。
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(1)話し合いがまとまらない場合
離婚調停は、基本的には話し合いの手続きですので、当事者双方の合意が得られなければ調停は成立しません。相手方が離婚に応じない意向が強い場合や親権に固執しており話し合いでの解決が難しい場合には、話し合いを継続しても結論を出すことが難しい場合があります。
このような場合には、調停を不成立にすることもできますが、調停を不成立にするかどうかを判断するのは、調停委員会ですので、申立人の意向では調停を不成立にすることはできません。
これ以上期日を重ねても時間の無駄だと判断した場合には、離婚調停を取り下げて、早期に離婚訴訟に移行した方がよいでしょう。 -
(2)相手方が調停を欠席している場合
離婚調停を申し立てたとしても、相手方が期日に欠席するということもあります。初回期日であれば相手方の日程を確認することなく期日を設定するため、仕事や家庭の事情で期日に出席することができないということもあります。
しかし、2回目以降の期日も欠席するような場合には、離婚調停で話し合いをする意向がないものといえますので、早い段階で離婚調停取り下げを行い、離婚訴訟に移行した方がよいでしょう。 -
(3)復縁をする場合
離婚調停で相手方の意見を聞いているうちに離婚をしたいという気持ちが変化してくることもあります。
夫婦関係を修復して復縁するような場合には、離婚調停を続けることには意味がありません。早期に取り下げを検討した方がよいでしょう。
4、調停の取り下げを決める前に弁護士に相談を
自分1人で離婚調停の取り下げを決めてしまう前に弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)取り下げるべきかをアドバイスしてもらえる
離婚調停を取り下げるかどうかは、その後の離婚訴訟も踏まえた判断が必要になってきます。離婚訴訟になれば、法定の離婚事由に該当する事情がなければ、そもそも離婚をすることができませんので、その点の判断が重要となります。
弁護士であれば、離婚の経緯や証拠の有無などから離婚訴訟になった場合の有利・不利を適切に判断することができますので、このまま離婚調停を継続した方がよいのかについてアドバイスをしてもらうことができます。
自分で判断して離婚調停を取り下げてしまうと、思わぬ不利益を被るおそれもありますので、専門家である弁護士に判断してもらうのが安心です。 -
(2)調停への同行や離婚訴訟の手続きを任せることができる
一人で離婚調停を進めることに不安があるという方は、弁護士に依頼をすることをおすすめします。
弁護士は調停期日に同行できるため、一人で対応しなければならないという不安は解消されます。調停委員への説明なども弁護士がサポートしますので、有利な条件で離婚をすることができる可能が高くなるでしょう。
また、離婚調停が不成立になった場合には、離婚裁判に移行することになりますが、その場合の手続きも弁護士にすべて任せることが可能です。離婚訴訟は、一般の方では適切に対応することが難しいケースも少なくありません。そのため離婚問題の実績がある弁護士に任せるのが安心といえます。
5、まとめ
離婚調停は、申立人であればいつでも自由に取り下げをすることができますが、取り下げにデメリットも生じますので、その点も配慮して取り下げするか否かの判断をする必要があります。
これから離婚調停の申立てをお考えの方や、すでに離婚調停を申し立てたが一人では不安があるという方は、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています