離婚の話し合いができない時の対処法と円滑に進めるためのポイント

2023年05月08日
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離婚の話し合いができない時の対処法と円滑に進めるためのポイント

2021年に埼玉県所沢市に寄せられた市民相談は2891件で、そのうち離婚に関する相談は330件でした。離婚を進めるにあたって、夫婦間だけでの話し合いができない状態に陥ってしまうケースはよく見られます。

話し合いがうまく進まない原因を取り除くのが難しければ、弁護士にご依頼の上で調停の申し立てや訴訟提起を検討しましょう。

今回は、離婚の話し合いができない場合の対処法や、離婚の話し合いをうまく進めるためのポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。

出典:「令和3年統計書」(所沢市)

1、相手が離婚の話し合いに応じない主な理由

夫婦の一方が離婚を希望していても、相手が離婚の話し合いに応じない背景には、以下のような理由があると考えられます。

  • 相手は離婚を希望していない
  • 相手が多忙で話し合う時間が取れない
  • 相手は離婚の話し合いを面倒くさがっている
  • 感情的な話し合いが物別れに終わってしまった
  • 提示した離婚条件に相手が納得していない
  • 相手が子どもへの影響を危惧している


相手に離婚の話し合いを拒否された場合は、やり取りの内容などからその理由を探った上で対応を検討しましょう。

2、離婚の話し合いができない場合の対処法

離婚についての話し合いができない場合には、以下の対応を検討してみましょう。

  1. ① 弁護士を代理人として話し合う
  2. ② 離婚調停を申し立てる
  3. ③ 離婚訴訟を提起する


  1. (1)弁護士を代理人として話し合う

    夫婦同士の離婚協議は感情のぶつけ合いになりがちですが、弁護士を代理人として離婚協議を行えば、論点の整理された冷静な話し合いができる可能性があります。

    協議不成立時になったとしても、離婚調停・離婚訴訟について、一貫して弁護士に対応を依頼できる点も大きなメリットです。離婚協議が難航した場合、まずは弁護士への相談をおすすめします。

  2. (2)離婚調停を申し立てる

    離婚協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。

    参考:「夫婦関係調整調停(離婚)」(裁判所)

    離婚調停は、調停委員を仲介者とする話し合いを行い、離婚成立を目指す手続きです。客観的な立場にある調停委員が仲介することで、冷静な話し合いが期待できます。

  3. (3)離婚訴訟を提起する

    離婚調停が不成立になった場合は、離婚訴訟を提起して判決による離婚を目指しましょう。

    離婚訴訟では、離婚を請求する側が法定離婚事由のいずれかを立証する必要があります(民法第770条第1項)。

    <法定離婚事由>
    1. ① 不貞行為
    2. ② 悪意の遺棄
    3. ③ 3年以上の生死不明
    4. ④ 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
    5. ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由


    したがって、法定離婚事由の立証に役立つ証拠を確保できるか否か、および法的に説得力のある主張を展開できるか否かが重要なポイントです。


    なお、離婚訴訟を提起するためには、先に離婚調停を申し立てる必要があります(調停前置主義、家事事件手続法第257条第1項)。離婚調停を経ずに、いきなり離婚訴訟を提起することはできないのでご注意ください。

3、離婚の話し合いをうまく進めるためのポイント

離婚の話し合いをうまく進めるためには、お互いにとって不快感がない交渉環境を確保した上で、論点を整理して冷静に話し合うことが大切です。特に以下のポイントについては、離婚協議を行うに当たって十分ご留意ください。

  1. ① 感情のぶつけ合いを避ける
  2. ② 相手が多忙すぎるタイミングを避ける
  3. ③ 希望する離婚条件を考えておく|離婚後の生活も見据えた検討を
  4. ④ 相手の主張を踏まえ、必要に応じて譲歩する
  5. ⑤ 不貞行為等の証拠を用意する
  6. ⑥ 弁護士に相談する


  1. (1)感情のぶつけ合いを避ける

    離婚協議をまとめるためには、感情のぶつけ合いを避けて冷静に話し合うことが大切です。お互いが冷静な状態で話し合うことができれば、離婚条件をひとつずつ着実に決めていくことで、離婚成立が一歩一歩近づきます。

    お互いが感情的な状態になってしまっている場合は、一度別居して冷却期間を置くことも効果的です。ただし後述する理由により、別居する際には原則として相手の承諾を得るようにしましょう。

  2. (2)相手が多忙すぎるタイミングを避ける

    離婚協議は込み入った内容になるため、お互いがゆっくり時間を取れるタイミングで行うべきです。

    これに対して、相手が仕事などで多忙すぎる時期に離婚協議を行っても、話し合いを深めることができず、協議成立は一向に近づきません。相手が忙しすぎる場合は、スケジュールを確認した上で、繁忙期が過ぎた段階で離婚協議を行いましょう。

  3. (3)希望する離婚条件を考えておく|離婚後の生活も見据えた検討を

    離婚協議を始めるに当たっては、以下の離婚条件について希望する内容・水準を検討しておきましょう。

    • 財産分与
    • 慰謝料
    • 婚姻費用
    • 親権
    • 養育費
    • 面会交流の方法
    など


    特に、財産分与や養育費などの金銭的な離婚条件については、離婚後の生活も見据えた上で交渉すべきです。きちんと検討・準備を行った上で離婚協議を始めることで、有利な条件で離婚できる可能性が高まります。

    離婚後の収支をイメージして、どの程度の条件であれば離婚してよいかを検討しておきましょう。

  4. (4)相手の主張を踏まえ、必要に応じて譲歩する

    ご自身の希望を一方的に主張するだけでは、離婚協議はまとまりません。

    離婚協をまとめるためには、譲れないポイントはきちんと主張しつつ、相手の希望にも耳を傾けた上で、可能な範囲で譲歩する姿勢が大切になります。

  5. (5)不貞行為等の証拠を用意する

    相手が離婚を拒否している場合や、慰謝料の支払いを求めたい場合には、不貞行為など法定離婚事由の存在を立証し得る証拠を確保しておくべきです。

    離婚協議の段階で証拠を確保し、相手に対してその証拠を提示すれば、好条件での離婚がスムーズに成立する可能性が高まります。

  6. (6)弁護士に相談する

    離婚協議に際しては、非常に幅広い事柄を検討しなければなりません。本人だけで対応するのは大変なため、弁護士への相談をおすすめします。

    弁護士は、適正な離婚条件の内容・水準についてアドバイスするとともに、実際の離婚協議についても全面的に代行します。離婚の話し合いが難航している場合は、まずは弁護士に相談してみましょう。

4、離婚について意識すべき注意点

配偶者との離婚を目指すに当たっては、トラブルを避けるため、以下の各点に十分ご注意ください。

  1. ① 勝手に離婚届を出すことはNG
  2. ② 別居する際には、原則として相手の承諾を得る
  3. ③ 離婚が成立するまでは、他の人と性的関係を持たない
  4. ④ 離婚条件を漏れなく話し合う
  5. ⑤ 離婚時には離婚公正証書を締結する


  1. (1)勝手に離婚届を出すことはNG

    離婚届を配偶者の承諾なく勝手に出した場合、その離婚は無効となります。それだけでなく、有印私文書偽造罪(刑法第159条第1項)・有印私文書行使罪(刑法第161条第1項)・公正証書原本不実記載等罪(刑法第157条第1項)により罰せられます。

    配偶者が離婚に同意しないからといって、勝手に離婚届を出すことは厳に控えましょう。

  2. (2)別居する際には、原則として相手の承諾を得る

    DVやモラハラの被害を受けている場合などを除き、別居する際には配偶者の許可を得ましょう。

    配偶者に無断で別居する行為は、「悪意の遺棄」に該当する可能性があるためです。悪意の遺棄に当たる無断別居をすると、有責配偶者となり、離婚請求が認められなくなってしまうおそれがあります。

  3. (3)離婚が成立するまでは、他の人と性的関係を持たない

    配偶者との離婚が成立するまでは、他の人(異性・同性を問わない)と性的関係を持ってはいけません。婚姻中に他の人と性的関係を持つことは「不貞行為」に該当し、有責配偶者となってしまうためです。

    すでに婚姻関係が破綻していれば不貞行為は成立しませんが、婚姻関係の破綻には、数年~10年以上の別居などの厳しい条件が要求されます。「結婚生活はもう終わりだからいいや」などと即断せず、弁護士のアドバイスをお求めください。

  4. (4)離婚条件を漏れなく話し合う

    離婚に当たっては、以下の離婚条件をもれなく話し合うことが大切です。決めておくべき離婚条件を決めずに離婚すると、離婚後のトラブルの原因になります。

    • 財産分与
    • 慰謝料
    • 婚姻費用
    • 親権
    • 養育費
    • 面会交流の方法
    など


    各離婚条件については、協議前の段階で法的検討を行う必要があります。

    ご自身の立場が曖昧なまま離婚協議を始めてしまうと、配偶者の主張に流されて、不利な条件で離婚することになってしまうかもしれません。離婚条件の適切な内容・水準については、弁護士に相談しておきましょう。

  5. (5)離婚時には離婚公正証書を締結する

    離婚について配偶者と合意したら、離婚条件をまとめた離婚公正証書を作成しておきましょう。合意内容を明確化・証拠化することで、離婚後のトラブル予防につながります。

    特に、配偶者から金銭(財産分与・慰謝料・婚姻費用・養育費など)の支払いを受ける場合には、離婚公正証書に「強制執行認諾文言※」を記載しておけば、不払いが生じた際には直ちに強制執行を申し立てることができます(民事執行法第22条第5号)

    ※強制執行認諾文言:債務不履行が生じた場合には、直ちに強制執行に服する旨の債務者の陳述を記載した文言

5、まとめ

離婚に関する話し合いができない状況に陥った場合には、弁護士を介した話し合いを試みた上で、ダメなら離婚調停の申し立てを行いましょう。

法定離婚事由が存在する場合には、離婚訴訟を提起して争うことも考えられます。どのような方針で対応すべきかについては、弁護士のアドバイスをお求めください。

ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談を随時受け付けております。協議離婚・調停離婚・裁判離婚の各手続きを通じて、円滑かつ早期に離婚を成立させられるように尽力いたします。配偶者との離婚をご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスにご相談ください。

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