離婚時に請求できるものは? 注意点や未払いを防ぐためにできること

2024年11月06日
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離婚時に請求できるものは? 注意点や未払いを防ぐためにできること

埼玉県の統計データによると、令和5年の埼玉県の離婚件数(概数)は1万697組でした。離婚率は全国平均の1.50組(人口千対)と同程度の1.52組となっています。

離婚の際には、夫(妻に)請求できるものは「婚姻費用」「養育費」「財産分与」「年金」「慰謝料」などが挙げられます。

このコラムでは、離婚時に請求できるものの詳細、注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。


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1、離婚に際して、配偶者に請求できるものとは?

離婚する際に、配偶者に対して請求できるお金にはさまざまな種類があります。

「知らなかったため請求できなかった」という事態を回避するためにも、以下の権利については正確に理解しておきましょう。

  1. (1)婚姻費用

    「婚姻費用」とは、夫婦やその子どもが婚姻生活を維持するための生活費であり、別居中に片方が困窮しないよう保護することが目的です(民法第760条)。

    たとえ別居をしていても、離婚が成立するまでの期間は、収入の多い方から少ない方に、生活に必要な費用を支払わなければならないということです

    具体的に婚姻費用に含まれる費用については、以下のようなものです。

    • 衣食住の費用
    • 出産費用
    • 医療費
    • 未成熟子の養育費
    • 教育費
    • 相当の交通費
    など
  2. (2)養育費

    「養育費」とは、一般的に子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要となる監護・教育・医療の費用を賄うために支払われる金銭をさします。

    子どもの養育費の金額については、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」によって算定することが一般的です。算定表は裁判所のホームページ上で誰でもチェックすることができます。

    具体的に養育費に含まれている費用としては、以下のようなものです。

    • 生活費(食費、衣料費、日用品費、光熱費など)
    • 住居費(子どもの生活に関する住居費)
    • 教育費(授業料、教材費、習い事の費用など)
    • 医療費(予防接種費、治療費、薬代など)
    など
  3. (3)財産分与

    財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して維持・形成した共有財産を、離婚の際に公平に分け合うことをいいます。

    たとえば、夫婦共有財産となりえる財産には、次のようなものがあります。

    • 結婚後に貯蓄した現金・預貯金
    • 結婚後に購入した土地、建物などの不動産
    • 結婚後に購入した自動車、家財道具
    • 結婚後に取得した株式や投資信託などの有価証券
    • 結婚後に加入した保険の解約返戻金
    • 退職金(婚姻期間中の積立分のみ)
    など


    財産分与の割合は、原則として「2分の1」とされることが一般的です夫が会社勤めをしていて妻が専業主婦であったとしても、妻にも2分の1の財産分与請求権が認められます

  4. (4)年金分割

    年金分割とは、夫婦であった期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。

    離婚する際に年金分割手続きが行われると、結婚していた期間について、厚生年金の支給額の計算のもとになる報酬額(標準報酬)の記録が分割されることになります

    このような年金分割制度によって、将来それぞれが年金を受け取ることができます。

  5. (5)慰謝料

    相手が「有責配偶者」に該当する場合には、慰謝料を請求することができます。有責配偶者とは、婚姻関係の破綻について原因を作った当事者のことをいいます。

    以下のような事情がある場合には、相手方は有責配偶者となる可能性が高いでしょう。

    • 不貞行為(不倫、肉体関係のある浮気)があったとき
    • 悪意の遺棄(一方的な家出・別居などで経済的援助を放棄するなど)をされたとき
    • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
    • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込がないとき
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(DV・モラハラなど)

2、離婚時にお金を請求する際の注意点

ここでは、離婚の際に相手に各種請求をする際に重要となるポイントを解説します。

  1. (1)離婚を伝える前に財産をすべて洗い出しておく

    離婚・別居を伝える前に保有している財産をできるだけ把握しておくことが大切です。

    相手が財産を有しているはずなのに、財産を隠してしまうと財産分与を求めることが難しくなってしまいます。そのため、ある程度、財産関係の全貌を把握した状態で、別居・離婚をするようにしましょう。

    まずは、分かる範囲で「預貯金」「不動産(家・土地など)」「動産(車・家具・貴金属など)」「金融資産」「各種保険の返戻金」「退職金」「年金」「負債(住宅ローンなど)」を洗い出していきましょう。

    ただし「隠し資産」を見つけるのは難しいため、離婚トラブルの実績がある弁護士に早めに相談することもおすすめです。

  2. (2)相手の不貞行為がある場合は証拠を集める

    相手に不倫やDVなどがある場合には、証拠を収集・保管しておくことが重要です。相手方の不法行為を証明する証拠が何もない場合には、慰謝料請求が認められません。

    具体的には、以下のものが不貞行為の証拠になりえます。

    • 性的関係を示唆するようなLINE、メール、手紙
    • 性的関係を示唆するような動画、画像
    • 電話の通話履歴
    • ホテル代のレシート、クレジットカードの明細
    • 相手宅やホテルなどのGPSの位置情報
    など
  3. (3)離婚後の生活費用は請求できない

    婚姻期間中であれば、別居から離婚までの生活費は婚姻費用として、相手に請求することができます。

    しかし、このような日々の生活費の分担義務は婚姻関係にある夫婦の間に発生する義務ですので、離婚して以降の生活費に関してはその分担義務は発生しません。

    原則として、離婚後の生活費を相手に支払ってもらうことはできませんので注意が必要です。

3、請求したお金の未払いを防ぐためにできること

夫婦が離婚の際に取り決めた内容については、「公正証書」の形で残しておくことがおすすめです。

ここでは、公正証書とはどのようなものか、作成のメリットについて解説していきます。

  1. (1)公正証書を作成しておく

    「公正証書」とは、公証役場で公証人に作成してもらう契約書のことで、夫婦が離婚する際、離婚に関する各種取り決めを書面で作成し、それを公証役場に持ち寄ることで作成してもらうことができます。

    このように公正証書は、合意内容の明確化や、約定義務の適切な履行を担保するために利用されることになります。

  2. (2)公正証書のメリットとは?

    公正証書については、法律の専門家である公証人が作成する文書であるため、条項の内容についても公証人がチェックしています。

    そのため、事後的に合意内容について紛争が蒸し返されるおそれは小さいといえるでしょう。

    また、取り決め通りに支払われない場合、通常であれば、民事訴訟を提起して債務名義を取得したうえで強制執行を申し立てる必要があります。しかし、公正証書に強制執行認諾文言を付していれば、上記のような民事裁判を経ずに、いきなり強制執行の申し立てができます。

4、離婚時のお金に関する問題は弁護士に相談を

離婚トラブルを弁護士に相談すべきメリットについて解説していきます。

  1. (1)請求できるもの・適正額などをアドバイスできる

    上述のとおり、離婚する際には、相手方にさまざまな請求ができる可能性があります。しかし、離婚の原因、互いの収入、子どもの年齢など、実際に請求できるものやその金額は異なります。

    弁護士に相談することで、ご自身のケースで、具体的な請求内容や金額について、適切なアドバイスを受けることができます

  2. (2)公正証書の作成をサポートできる

    離婚時のさまざまな取り決めについて、弁護士に公正証書の作成を依頼することができます。

    公正証書に記載する内容が当事者にとって適切なものか否かについては、公証人が判断することはできません。そのため、離婚条件については、あらかじめ弁護士を入れて適切な内容で合意しておくことが重要です。

  3. (3)相手との交渉など任せられる

    相手方との交渉も弁護士に任せることで、依頼人の希望に沿う内容で手続きを進められる可能性が高まります。

    離婚調停や訴訟に発展した場合であっても、弁護士が必要書類や証拠集めをサポートし、速やかに裁判手続きに対応します。

5、まとめ

離婚時には、子どもの養育費以外にも財産分与や年金分割を請求することができます。また、相手に不貞行為やDVなどがある場合には慰謝料を請求できる可能性があります。

離婚後も安定した生活を送るために、適切な金額の請求は重要です。養育費や財産分与、慰謝料請求でお困りの場合には、離婚問題に実績のある弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスには、離婚トラブルの解決実績がある弁護士が在籍しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています