近隣トラブルが原因の嫌がらせ。 解決のポイントを弁護士が解説
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所沢市は、都心から約30㎞圏内という立地であり、交通アクセスの良さも相まって、ベッドタウンとして発展してきた都市です。また、所沢市の人口は、令和3年9月1日現在で、34万2145人であり、埼玉県内では、さいたま市、川口市、川越市に次いで4番目に多い人口です。
人口が増えてくると近隣トラブル、それが原因の嫌がらせが発生する可能性が高くなります。ささいなことが原因で生じた近隣トラブルであっても、対応を誤ると重大な事件に発展することもあります。近隣住民との関係性を悪化させたくないという思いから、なかなか対応することができないのも近隣トラブルの解決が難しい要因といえます。
今回は、近隣トラブルによって生じた嫌がらせを解決するために行うべきことなどを、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士がご紹介します。
1、近隣トラブルの原因
近隣トラブルが生じる原因としてはどのようなものがあるのでしょうか。以下では、近隣トラブルが生じる代表的な原因について説明します。
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(1)騒音
近隣トラブルでもっとも多いと考えられる原因が騒音に関するトラブルです。特にマンションやアパートなどの集合住宅では、壁を隔ててすぐ隣に近隣住民が生活していますので、隣人の騒音が不快に感じて、それをきっかけとして騒音トラブルが生じることがあります。人が生活していく中では、テレビやオーディオの音、話し声、ドアの開閉音、子どもの走り回る音などさまざまな生活音が生じます。
どの程度の音が不快に感じるかは人それぞれですので客観的に判断することは難しいですが、音の大きさだけでなく、時間帯や頻度などを踏まえて騒音といえるかどうかが判断されます。 -
(2)悪臭
生ごみをベランダに放置していると腐敗などによって悪臭が生じることがあります。また、ペットを飼っている家庭では、糞尿を適切に処理しなければ、悪臭を生じてしまうことがあります。このようなにおいに関することが原因となって近隣トラブルに発展することがあります。
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(3)境界
戸建ての住宅で多いトラブルが隣地との境界をめぐるトラブルです。古い住宅街などでは、境界があいまいになっていたり、本来の境界からズレが生じていることがあります。自宅を立て替えたり、新しくフェンスを設置しようとした際に、土地の境界を調査することがありますが、その際に境界の誤りが判明することが多いです。
境界の誤りが判明した場合には、隣地の所有者と話し合いをすることになりますが、境界をどうするかについては、お互いの利害関係が衝突することになりますので、その際に隣人トラブルが生じてしまいます。 -
(4)ルールやマナー
地域によっては、ゴミ出しやごみの分別など細かいルールが決められているところもあります。このようなルールを守らずに自分勝手に行動をしていると近隣住民から苦情を受けたりしてトラブルに発展することがあります。
また、集合住宅では、ベランダでタバコを吸う方もいるかもしれませんが、タバコの煙によって干している洗濯物に臭いが付いたり、窓からタバコの煙が部屋に入ってくることもあります。集合住宅では、タバコのマナーをめぐって近所トラブルが生じることもあります。
2、嫌がらせにあたる行為と問われる罪
近隣トラブルが生じて近隣住民から嫌がらせを受けた場合には、何か罪に問うことはできないのでしょうか。以下では、犯罪に該当し得る嫌がらせについて紹介します。
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(1)張り紙
自宅の玄関や集合住宅の掲示板などに嫌がらせの張り紙をされることがあります。
他人の家屋に張り紙をする行為は、軽犯罪法1条33号に違反する行為ですので、このような行為をした場合には、拘留または科料に処せられる可能性があります。
また、張り紙の内容が「○○は犯罪者だ」、「○○は不倫をしている」など本人の社会的評価を低下させるような内容であった場合には、名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)が成立する可能性があります。
名誉毀損罪が成立した場合には、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられ、侮辱罪が成立した場合には、拘留または科料に処せられます。 -
(2)無言電話・いたずら電話
しつこい無言電話を受けた被害者は、無言電話が怖くて眠ることができずに体調を崩したり、恐怖心から動機や息切れなどの症状が出ることがあります。このように無言電話によってPTSDなどの精神的な障害を負わせた場合には、傷害罪(刑法204条)が成立する可能性があります。傷害罪が成立した場合には、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
また、いたずら電話によって被害者に危害を加えるような内容を告知した場合には、脅迫罪(刑法222条)が成立する可能性があります。脅迫罪が成立した場合には、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。 -
(3)動物の死体や汚物の送付
嫌がらせの目的で動物の死体や糞などの汚物を玄関に放置されたり、郵便受けに入れられたりすることがあります。このような行為をした場合には、廃棄物処理法16条に違反することになりますので、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこれらを併科される可能性があります。
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(4)うわさ話
近隣住民の立ち話でありもしないうわさ話によって名誉を傷つけられた場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があります。名誉毀損は、不特定または多数の人に事実を指摘することによって成立する犯罪ですが、少数の人に事実を伝えた場合でもそこから多数の人に広まっていく可能性があれば、名誉毀損罪は成立します。
3、近隣トラブルによる嫌がらせの相談窓口
近隣トラブルが生じ場合には、当事者同士の話し合いではさらなるトラブルに発展する危険があります。そのため、以下のような相談窓口を利用することをおすすめします。
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(1)管理会社や自治会
集合住宅内で近隣トラブルが生じた場合には、管理会社に連絡をして対応してもらいましょう。本人同士で話し合いをするよりも間に第三者が入ってもらった方がお互いに冷静になって対応することができます。
一戸建て住宅の場合には、管理会社は存在しませんので、町内会や自治会に相談をしてみましょう。ゴミ出しのルールやマナーなどであればその町内のルールを説明して説得してくれますし、個人的なトラブルであっても間に立って話し合いを進めてくれる場合もあります。 -
(2)市区町村役場
近隣トラブルは、お住まいの市区町村役場の生活課に相談するというのも一つの方法です。騒音や悪臭などのトラブルであれば、相談をした担当者が直接トラブルの解決に向けて対応してくれることもあります。
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(3)警察
近隣住民からの嫌がらせが犯罪に該当するレベルに達している場合には、警察に相談することをおすすめします。軽い気持ちから嫌がらせをしていた人であれば、警察によって事情聴取を受けることだけでも大きな衝撃ですので、それによって自己の行為を反省して、嫌がらせがやむこともあります。
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(4)弁護士
近隣住民とのトラブルを解決するためには、弁護士に相談をすることも有効な手段となります。弁護士であれば、代理人として相手と直接交渉を行うことが可能ですので、トラブルの解決に向けた提案をするなどして法的観点から問題の解決を図ることができます。
また、話し合いだけでは解決することが難しい事案については、民事調停を申し立てることによって、できる限り円満な方法で解決をすることができます。
4、円滑に解決するため証拠集めを
嫌がらせに対する対応をするためには、まずは誰が嫌がらせをしているかを特定する必要があります。嫌がらせをする人のほとんどが身分を隠して匿名で嫌がらせ行為をするため、実際に被害を受けた状況を撮影した動画や写真、録音データなどがなければ対象となる人物を特定することができません。
また、嫌がらせをしている人がわかったとしても、証拠がなければ容易に言い逃れができてしまいますので、やはり証拠が必要となってきます。管理会社・自治会、警察に相談をする場合にも証拠がなければ積極的な対応をしてもらえません。
このように、近隣トラブルを解決するためには、近隣住民から嫌がらせを受けているという証拠を収集することが重要になります。
ただし、証拠がそろったからといって、すぐに自分だけで対応しようとするのは控えましょう。当事者同士での話し合いでは、お互いが感情的になってしまい、さらなるトラブルに発展するリスクがあるからです。
賃貸物件であれば、引っ越しをしてしまえば近隣トラブルを回避することもできますが、一戸建て住宅の場合には容易に引っ越しをすることができませんので、できる限り円満に解決することができるように近隣住民とのコミュニケーションには特に注意を払う必要があります。
5、まとめ
近隣トラブルに巻き込まれてしまった方は、どのように対応すればよいのかわからず、精神的にも追い込まれてしまいます。そのような場合には、一人で悩むのではなく、周囲の人へ相談したり、警察に状況を説明したりするなどして、アドバイスを受けることも大切です。
また、物理的な被害が出ている、嫌がらせによって店の売り上げが大きく減少したなどのケースでは、弁護士が代理人として嫌がらせをしている相手との交渉を行うことも可能です。
近隣トラブルでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています