代金未払いが判明! すぐやるべきことから法的措置まで弁護士が解説

2025年02月26日
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代金未払いが判明! すぐやるべきことから法的措置まで弁護士が解説

令和6年9月、埼玉県で市職員が、水道管の漏水修理工事を発注した業者などからの請求書を留め置き、未払いを発生させたとして減給処分されました。

取引先から支払われるはずの商品や工事などの代金が未払いになっていたら、速やかにその理由を確認しましょう。法的措置によって債権回収を図る場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

本記事では、代金未払いに対してとり得る法的措置の内容や、弁護士に相談するメリットなどをベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。

1、取引先の代金未払いが分かった場合にすぐ行うべきこと

取引先の代金未払いが発覚したら、契約書などの取引に関する規定や、代金が支払われていない理由を確認しましょう。

  1. (1)契約書などの確認

    まずは、代金の支払いに関する契約書や発注書などを参照して、以下の事項を確認しましょう。

    • 未払いとなっている代金はいくらか
    • 代金の支払期限はいつか
    • 代金の未払いに対するペナルティの内容(遅延損害金、契約の解除など)
    • 訴訟を提起する場合の専属的合意管轄裁判所はどこか
    など


    なお、専属的合意管轄裁判所とは、取引相手との間で金銭トラブルなどが発生し、裁判を起こす場合に、相手と合意して指定した裁判所のことです。契約書では合意管轄条項という項目で記載されています。

    これらの事項を把握したうえで、取引先に連絡した際の反応を見ながら、今後の対応を検討しましょう。

  2. (2)支払われていない理由の確認

    契約書などを確認し、未払いが発覚したら、取引先に対して以下の事項を連絡し、支払われていない理由を確認しましょう。

    • 未払いとなっている代金の発生原因(例:2024年□月□日に納品した、○○という商品△個の代金××円)
    • 代金の本来の支払期限と、その期限を経過した旨
    • すぐに代金を支払ってほしい旨
    • すぐに支払えない場合は、その理由を教えてほしい旨
    など


    取引先は、代金の支払いを忘れているだけかもしれません。そのため、最初の連絡の段階で「支払われなければ法的措置を講じます」などと強い言葉を使うのは避けた方がよいでしょう

    あくまでも丁寧な言葉で、代金の速やかな支払いを促しつつ、支払われていない理由を確認するというスタンスで対応することをおすすめします。

    もし、連絡をした結果、取引先の倒産が原因で未払いが発生していると分かったときの対処法は、「3、代金未払いの取引先が倒産していた(倒産しそうな)場合の対処法」をご参照ください。

2、代金未払いの法的措置をお考えなら、弁護士へ相談を

取引先が商品やサービスの代金を一向に支払わない場合は、以下の法的措置を講じることを検討しましょう。いずれも、弁護士に依頼することでスムーズかつ効果的に手段を用いることができます。

  1. (1)内容証明郵便による請求書の送付

    代金の支払いを求める強いメッセージを伝えるためには、内容証明郵便で請求書や督促状を送付することが有効です。

    内容証明郵便は、郵便局が差出人・宛先・差出日時・内容を証明する郵便物です。法的な請求に用いられることが多いものとして広く認識されています。弁護士に依頼すると、弁護士名義の内容証明郵便を送付できるため、相手方にプレッシャーを与えられる可能性が高まります

    また、内容証明郵便の送付には、消滅時効の完成を6か月間猶予する効果があります(民法第150条第1項)。
    代金請求権は、行使できることを知ったときから5年が経過すると、時効により消滅します(2020年4月1日以降に代金請求権が発生した場合。民法第166条第1項第1号)。消滅時効が完成する前に、速やかに内容証明郵便を送付しましょう。

    内容証明郵便を送付するには、内容文書1通に加えて、謄本を2通作成する必要があります。謄本とは、内容文書を書き写した書面を指します。厳密な書式ルールが設けられており、ルールに反した謄本は受理されません。
    弁護士であれば、書式ルールを守った謄本を作成することができるため、書面作成に不安がある際は弁護士に相談しましょう。

  2. (2)支払督促の申立て

    代金の支払いは、裁判所の支払督促によって請求することもできます。

    支払督促は、支払いの義務を果たす催促のことで、簡易裁判所の書記官が行います。簡易裁判所に申立てを行うと、書類審査だけで速やかに支払督促が発せられます。

    支払督促が送達されると、相手方より2週間以内に返済、または異議申し立てがあります。もし、2週間以内に相手方から何かしらの対応がなければ、仮執行宣言付支払督促を申し立てることができます。
    仮執行宣言付支払督促は、強制執行の債務名義(=強制執行の申立てに必要な公文書)として用いることが可能です。

    仮執行宣言付支払督促に対しても、送達後2週間に限って、相手方からの異議申立てが認められています。異議申立てがあった場合は自動的に訴訟へ移行しますが、異議申立てがなかった場合は相手方の代金の支払義務が確定します。

    弁護士であれば、適切に支払督促の申立てをすることができ、相手方から異議申立てがあった際の訴訟の準備もサポート可能です

  3. (3)民事調停の申立て

    民事調停は、簡易裁判所で行われる話し合いによる紛争解決手続きです。民間から選任される調停委員2名が、紛争当事者間の話し合いを仲介し、合意による解決を目指します。

    民事調停において当事者間の合意が得られた場合は、その内容を記載した調停調書が作成されます。調停調書は、強制執行の債務名義として用いることが可能です。

    民事調停を有利に進めるためには、調停委員に対して事実関係を的確に伝え、代金請求権があることを理解してもらうことがポイントです。
    弁護士に依頼すれば、調停委員に対して自社側の主張を説得的に伝えることができます

  4. (4)訴訟の提起

    支払督促に対して異議が申し立てられ、または民事調停が不成立となった場合は、訴訟で未払い代金を請求しましょう。
    また、支払督促や民事調停を経ることなく、直ちに訴訟を提起することもできます。

    訴訟は、裁判所の公開法廷で行われる紛争解決手続きです。訴訟を提起した側は原告として、代金請求権を発生させる事実を主張し、裁判所に対して代金の支払いを命ずる判決を求めます。
    勝訴判決が確定すれば、確定判決を強制執行の債務名義として用いることができます。

    訴訟では、契約書・発注書や納品・サービスの提供記録などの客観的な証拠に基づき、代金請求権の存在を立証する必要があります。また、訴訟の手続きやルールは複雑であるため、一般の方が自力で対応するのは大変です。
    弁護士に依頼すれば、法的な観点から十分な準備を整えて訴訟へ臨むことができます。また、訴訟手続きでは、訴訟代理人として必要な対応を全面的に依頼可能です。

    なお、請求額が60万円以下である場合は、審理が原則として1日で終わる「少額訴訟」を利用することもできます。少額訴訟は、弁護士に依頼せずとも自分で提起することが可能です。

  5. (5)強制執行の申立て

    仮執行宣言付支払督促・調停調書・確定判決などの債務名義を得たときは、それを用いて相手方に強制執行を申し立てることができます。
    代金請求権の強制執行がなされると、債務者の財産を差し押さえたうえで、財産を処分しお金に換える換価処分などを経て、強制的に支払いへ充当します。

    強制執行の申立てにあたっては、申立書などの作成に加えて、差し押さえるべき債務者の財産を特定しなければなりません。
    弁護士は、受任した事件の解決に必要な情報を収集するための「弁護士会照会」や、民事執行法に基づく財産開示手続、第三者からの情報取得手続などを通じて、債務者の財産を特定しますそのうえで、強制執行を申し立てることが可能です

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3、代金未払いの取引先が倒産していた(倒産しそうな)場合の対処法

取引先が倒産しているか、近日中に倒産を予定している場合には、商品やサービスの代金を全額回収することは期待できません。

企業が倒産する際には、弁護士に倒産手続きの代理を依頼するのが一般的です。取引先の代理人弁護士に連絡して、倒産手続きに関する今後の予定を確認しましょう。

倒産手続きのなかで、最も広く利用されているのが破産手続きです。破産手続きでは、破産者の財産を換価処分し、得られたお金を原資に債権者への配当が行われます。
破産者の代理人弁護士または破産管財人から債権調査票が送られてきますので、代金請求権の発生原因や金額などを記載して返送しましょう。

ただし破産手続きにおいては、債権者に対する配当が全く行われないか、配当があっても額面の数%程度にとどまるケースが多くあります。
取引先が破産したら、商品やサービスの代金は、ほとんど回収できないことを覚悟しておきましょう。

4、企業がトラブルに備えるためには顧問弁護士の活用を

取引先の代金未払いのほかにも、企業は労使紛争やSNSアカウントの炎上など、さまざまなトラブルのリスクを抱えています。
企業経営におけるトラブルのリスクを軽減しつつ、発生したトラブルについて迅速かつ適切に対処するためには、顧問弁護士と契約するのが安心です

ベリーベスト法律事務所は、月額4980円からご利用いただける定額の顧問弁護士サービスをご用意しております。顧問弁護士をお探しの企業は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。

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5、まとめ

取引先の代金未払いが判明したら、速やかにその理由を確認し、状況に応じて訴訟などの法的措置を検討しましょう。債権回収のための法的措置を講じる際には、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、企業におけるトラブルのご相談を随時受け付けております。取引先の代金未払いを含めて、企業経営におけるトラブルにお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています