逮捕後は拘留? 勾留? 意味や期限の違いなど注意点を解説
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埼玉県警察がホームページ上で公開しているデータによると、令和3年1月から10月までの刑法犯検挙人員は8145人で、前年同期と比べるとマイナス589人でした。ほとんどの種別で検挙人員が減少していますが、少し見方を変えると県下で8000人を超える人が罪を犯した容疑で検挙されていることになります。
このように数字で表せば、あなたのそばでもいつ、誰が犯罪の容疑をかけられてしまうのか分からないといえるでしょう。家族や身近な人が刑事事件を起こしてしまい、心配になってさまざまな情報を調べるなかで「逮捕されると拘留される」と聞いたことがある方もいるはずです。
「拘留」とはどのような状態を指すのでしょうか。また、同じように刑事事件の流れのなかには「勾留」という用語も登場しますが、違いはあるのでしょうか。本コラムでは紛らわしい「拘留」と「勾留」を解説しながら、逮捕後の刑事手続きの流れに触れていきます。
1、逮捕されると「拘留」? それとも「勾留」?
刑事手続きのなかには、日ごろの生活では触れることのない難しい用語が数多く登場します。
そのなかでも読み方が同じで混同しやすいのが「拘留」と「勾留」でしょう。どちらも「こうりゅう」と読みますが、登場する機会や意味はまったく異なります。
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(1)拘留とは?
「拘留」とは、刑事裁判で言い渡される法が定めた刑(法定刑)である刑罰のひとつです。
わが国の刑罰制度では、死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料の6つを主刑としており、拘留もそのひとつとして規定されています。
拘留は1日以上30日未満の期間に限って、受刑者の身柄を刑事施設に拘束する刑罰です。
身柄を拘束する刑罰と聞いてまず多くの方がイメージするのは懲役(ちょうえき)でしょう。
懲役も刑事施設において身柄を拘束する刑罰ですが、期間は1か月以上であり、収監中は刑務作業という労働への従事を強いられます。
拘留はごく短期の懲役ともいえますが、懲役との違いは刑務作業への従事を強いられないことです。また、懲役では刑務所に収監されますが、拘留は刑期が短く刑務所への移送前に刑の執行が終了してしまうため、実質的には拘置所で執行されます。 -
(2)勾留とは?
逮捕と連動して行われるのが「勾留」です。
勾留とは、検察官の請求を受けて裁判官がこれを許可したときだけに許される身柄拘束の手続きを指します。疑いをかけられている段階の身柄拘束のため、刑罰ではなく前科もつきません。
勾留がおこなわれるのは、警察や検察官の手によって逮捕されたあとです。犯罪の容疑をかけられている容疑者が逃亡や証拠隠滅を図る事態を防ぎ、刑事裁判への出廷を確保するために取られる手続きなので、刑罰としての身柄拘束である拘留とはまったく違う性格をもっています。
2、勾留期間は何日? 期限がくれば釈放される?
逮捕されると、勾留による身柄拘束を受けることになります。勾留されると、何日くらいの身柄拘束を受けるのでしょうか。
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(1)勾留期間の最長は20日間
勾留の日数は、刑事手続きのルールを定める、刑事訴訟法第208条によって「10日以内」と定められています。
ただし、やむを得ない事由があると認められるときは、検察官の請求によってさらに10日以内の延長が可能です。したがって、初回の勾留10日以内+延長請求10日以内で、勾留の最長期間は20日間となります。 -
(2)起訴されるとさらに被告人として勾留される
罪を犯したからといって、すべての事件に刑罰が科せられるわけではありません。
検察官が刑事裁判を提起し、裁判官の審理を経て有罪判決を受けた場合に限って刑罰が科せられます。このように、検察官が刑事裁判を提起することを「起訴」といい、起訴された人を「被告人」といいます。
逮捕・勾留を経て起訴された被告人は、刑事裁判への出廷を確保するためにさらに勾留されますが、この場合の勾留期間は約1か月です。ただし、実質的には刑事裁判が続く限り延長可能なので、起訴後の被告人勾留を受けると長期にわたって社会から隔離されてしまいます。
3、逮捕されるとどうなる? 刑事手続きの流れ
犯罪の容疑をかけられて警察に逮捕されてしまった場合の刑事手続きの流れを確認しておきましょう。
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(1)逮捕による身柄拘束を受ける
警察に逮捕されると、ただちに身柄拘束がはじまります。身柄拘束といっても、手錠や腰縄を着けられることを指すわけではありません。「自由な行動を制限する」という意味です。
自由な行動は許されないので、自宅に帰ることも、家族や友人に電話をかけたりメッセージや手紙を送ったりすることもできません。
警察の段階における身柄拘束の期間は48時間以内です。この期間に、警察による取り調べや指紋・DNA資料の採取などがおこなわれます。 -
(2)検察官へと送致されて勾留を受ける
逮捕後の捜査を終えた警察は、逮捕した被疑者の身柄を検察官へと引き継ぎます。この手続きを「送致」といいます。ニュースなどでは「送検」と呼ばれるので、聞いたことがある方も多いはずです。
送致を受けた検察官は、24時間以内にさらに取り調べをおこない、刑事裁判を提起するべきかどうかを検討します。しかし、24時間では捜査が完了せず、十分な証拠がそろっていないこともあります。
その場合、検察官は裁判官に対して「捜査を継続するために身柄拘束を延長したい」と請求します。この手続きが「勾留請求」であり、裁判官が請求を認めると勾留が始まります。 -
(3)検察官が起訴・不起訴を判断する
勾留が満期を迎える日までに、検察官は起訴・不起訴を判断します。
検察官が「厳しく罰するべき」と判断すれば起訴されて刑事裁判へと進みます。一方、さまざまな事情に照らして刑罰は必要ないと判断すれば不起訴となります。
令和2年版の犯罪白書によると、刑法犯全体の起訴される割合は38.2%でした。つまり、統計をみると起訴される事件はおよそ4割程度であり、残る6割は不起訴となっていることがわかります。 -
(4)刑事裁判が開かれて刑罰が言い渡される
検察官が起訴すると刑事裁判へと移行します。刑事裁判には、傍聴人に公開される「公判」と、書面のみで審理される「略式手続」があります。
略式手続は非公開で審理されるため被告人にとってメリットを感じられますが、略式手続が可能なのは簡易裁判所が管轄する100万円以下の罰金または科料が予定されている事件だけです。
さらに、略式手続ではかならず有罪となって罰金・科料が言い渡されることになり、無罪を主張することはできません。もし無罪を主張したいと考えるなら、略式手続ではなく公判において裁判官の審理を受ける必要があります。
4、家族が勾留された! 取るべき行動とは?
家族が逮捕・勾留されたとき、あなたはどのような行動を取ればよいのでしょうか?
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(1)弁護士にサポートを依頼する
家族が逮捕されたことが判明したら、ただちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。
逮捕直後の72時間は家族であっても面会が認められません。自由に面会できるのは弁護士だけのため、なるべく早く家族のもとへ弁護士を派遣することをおすすめします。
依頼を受けた弁護士は、ただちに接見に向かい、事件の内容や逮捕の状況などを詳しく聞き取り、有効な解決策を練り、取り調べに対するアドバイスをします。
なお、勾留が決定した場合は、早期釈放を目指すことが大切です。弁護士を代理人として被害者との示談交渉を進める、準抗告や勾留取消請求といった法的手段で勾留の解除を目指すといった対策を尽くせば、不起訴処分が下されて満期を待たずに釈放される可能性があります。 -
(2)面会・差し入れなどのサポートを尽くす
逮捕・勾留された被疑者本人は、不慣れな留置場での生活や連日のように続く取り調べに疲弊すると同時に、身柄拘束による精神的なショックを受けています。家族からの面会や差し入れは、本人にとって心強い支えになるでしょう。
罪と向き合い、反省して更生を目指す気力にもつながるので、面会・差し入れの機会はぜひ活用するべきです。
もし、面会を禁じる「接見禁止」が付されてしまった場合は、自由な接見が認められている弁護士にサポートを依頼しましょう。
5、まとめ
刑事事件を起こして逮捕されると、その後は「勾留」による身柄拘束を受けます。
一方、同じ“こうりゅう”でも「拘留」は刑罰のひとつであり、検察官が起訴に踏み切って刑事裁判で拘留が言い渡された場合に限って科せられるものです。
勾留を受けると、最長20日間にわたって身柄拘束が継続します。この期間は自宅へ帰ることも仕事や学校に行くこともできないので、たとえ事件を穏便に解決できても社会生活への悪影響は避けられません。
勾留による不利益を回避するには、逮捕された直後から弁護士のサポートを得ることが大切です。家族が逮捕・勾留されてしまい、早期釈放や処分の軽減を望むなら、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 所沢オフィスにおまかせください。弁護士とスタッフが一丸となり、迅速にサポートいたします。
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