合意の上だったワンナイトの相手から訴えられた! するべき対応

2022年09月15日
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合意の上だったワンナイトの相手から訴えられた! するべき対応

マッチングアプリ等を利用して、一夜限りの関係、いわゆる「ワンナイト(ラブ)」を楽しんだつもりが、思わぬトラブルに発展することがあります。

特に、同意のうえで肉体関係をもったつもりだったのに、あとから性的暴行を訴えられるというケースは、刑事事件としても、民事的な責任についても、解決が難しくなります。

平成30年8月には、SNSで知り合った女性に対して、所沢市内で性的暴行をはたらいた容疑で大学生が逮捕されました。この事例では同意の有無に関する報道はありませんでしたが、SNSなどをきっかけにワンナイトの相手との間でトラブルになるケースは少なくありません。

本コラムでは、合意のうえだったはずのワンナイトの相手から訴えられた場合に取るべき行動について、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。

1、ワンナイトで巻き込まれやすいトラブル

一夜限りの関係を「都合がよい」「あとくされがない」などと考えてはいけません。

親密な関係でもないのに急接近してくる相手のなかには、あなたを違法行為の加害者として陥れようとしている者がいるかもしれないのです。

ワンナイトで巻き込まれやすいトラブルの例を挙げていきましょう。

  1. (1)強制わいせつや強制性交等に関するトラブル

    相手も合意のうえだと都合よく信じて肉体関係を結んでいると、あとで「合意したおぼえはない」「むりやり性的な暴行を受けた」と訴えられてしまうおそれがあります。

    身体を触った、無理やり衣服を脱がせた、キスをしたといった行為があれば刑法第176条の強制わいせつ罪に、性交・肛門性交・口腔性交があれば同第177条の強制性交等罪に問われるかもしれません

    もちろん、双方が合意のうえで行為に至った場合は犯罪にはなりませんが、基本的には周囲の人目を避けて密室でおこなわれるうえに、会話などの証拠もなく、そもそも明確な合意も存在しない成り行き任せの流れも多いので、無罪の主張は容易ではないでしょう。

    これらの犯罪に科せられる刑罰は次のとおりです。

    • 強制わいせつ罪……6か月以上10年以下の懲役
    • 強制性交等罪……5年以上の有期懲役
  2. (2)傷害や恐喝に関するトラブル

    素性を知らない相手だと、親密に一夜を過ごしてもあとになって「裏路地で殴られて怪我をした」「金銭を脅し取られた」など、いわれのない罪をかぶせられてしまうおそれがあります。

    他人に暴力をふるって怪我をさせれば刑法第204条の傷害罪に、金銭を脅し取れば同第249条の恐喝罪です。また、ホテルから出てきたところを待ち伏せて、相手の恋人や家族だと主張して慰謝料や迷惑料といった名目で金銭の支払いを求めてくる、いわゆる「美人局(つつもたせ)」の被害に遭うケースも考えられます。

    • 傷害罪……15年以下の懲役または50万円以下の罰金
    • 恐喝罪……10年以下の懲役
  3. (3)窃盗に関するトラブル

    ホテルで相手がシャワーを浴びたり寝入ったりして自分の財布などから気が逸れている時間があると、あとになって「財布に入れていたお金を盗まれた」「カバンに入れていたはずの現金がなくなった」など、あらぬ疑いをかけられてしまうかもしれません。

    もちろん、自分自身も、貴重品から目を離してしまうと盗難の被害に遭うおそれがあります。
    こっそりと金品などを盗む行為を罰するのは、刑法第235条の窃盗罪です。

    • 窃盗罪……10年以下の懲役または50万円以下の罰金
  4. (4)不貞行為を理由とした慰謝料請求トラブル

    ワンナイトであっても、あなたや相手方に配偶者がいる場合、肉体関係を持てば、相手の配偶者や自分の配偶者から不貞行為を理由として民事的に訴えられて、民法709条に基づく慰謝料の支払いを請求されてしまうおそれがあります

    不貞行為そのものは犯罪ではありませんが、不貞行為に基づく慰謝料の支払義務が生じたり、民法770条1項1号の「配偶者に不貞な行為があったとき」として離婚が認められたりする場合があります。

    事実であれば裁判所に訴えられた場合は慰謝料の支払いを命じられてしまうでしょう。

2、被害届を出されるとどうなるのか?

トラブルの相手から「被害届を出す」「警察に訴える」と言われてしまうと、事件になる、刑罰を受けるといったその後の流れが気がかりになるものです。

犯罪の容疑があり、被害届を提出されてしまうと、その後はどうなってしまうのでしょうか?

  1. (1)警察の捜査対象になる

    被害者から「犯罪の被害に遭った」という申告を受けた警察は、捜査を開始します。

    まずは被害者が申し立てる被害の状況を明らかにし、証拠を確保して、実際に被害が発生したという事実を固める捜査から進められるのがセオリーです。ワンナイトからのトラブルでは、相手が自分の素性を知らないケースも多いので、携帯電話番号やSNSのアカウントといった情報から、容疑者が「どこの誰」であるのかの捜査も進められます。

    ある程度の段階まで捜査が進むと、警察に呼び出しを受けたり、とつぜん逮捕されたりして、取り調べを受けることになるでしょう。被害者の説明と容疑者の供述が合致するのか、嘘をついて罪を逃れようとしていないかといった観点から、厳しい追及を受けます。

  2. (2)検察官が起訴すると刑事裁判の被告人になる

    最初に事件の捜査を進めるのは警察ですが、容疑者の処罰を求めるかどうかの判断は検察官に委ねられています。

    検察官は、みずからも容疑者の取り調べをおこなったうえで、刑事裁判を起こすべきと判断すれば「起訴」、刑罰を科す必要はないと判断すれば「不起訴」とします。

    起訴された容疑者は「被告人」という立場になり、指定された期日に裁判所へと出頭し、裁判官による審理を受けなければなりません。

  3. (3)有罪判決が下されると刑罰を受ける

    裁判官による審理の結果、有罪判決が下されると刑罰が言い渡されます。
    指定された期日までに不服申立てをしなかった場合は刑が確定し、懲役や罰金といった刑罰が科されることになります。

3、容疑をかけられると必ず逮捕される? 逮捕の可能性が低いケース

犯罪の容疑をかけられてしまったとき、気がかりなのは「逮捕されるのか?」という点でしょう。たしかに、新聞やテレビニュースなどで報じられる事件の多くは「容疑者が逮捕された」という内容です。
やはり容疑者となると警察に逮捕されてしまうのでしょうか?

  1. (1)必ず逮捕されるわけではない

    ドラマなどフィクションの世界では「逮捕」が「犯人として観念する」「罰を受ける」といった手続きであるかのように描かれています。

    新聞・テレビニュースなどの報道と相まって、事件の容疑者はすべて逮捕されるかのようなイメージがありますが、それは間違いです。

    逮捕とは、犯罪の容疑がある者の身柄を拘束して捜査機関の管理下に置き、逃亡や証拠隠滅を防ぎ、正しい刑事手続きを受けさせるための強制処分のひとつとして位置づけられています。

    逮捕が認められるのは、容疑者が逃亡を図ったり証拠を隠滅したりするおそれがあり、裁判官がこれを許可する「逮捕状」を発付したときに限られるのが原則です。

    令和3年版の犯罪白書によると、令和2年中に検察庁で処理したすべての刑事事件のうち、逮捕を伴った事件の割合は34.8%でした。

    つまり、残る約65%の事件は、逮捕されないまま処理されていることになります。
    この統計をみれば、容疑をかけられても必ず逮捕されるわけではないし、むしろ逮捕されないまま処理されるほうが多数だという事実がわかるでしょう

  2. (2)逮捕される可能性が低いケース

    逮捕されない事件のほうが多いとはいえ、やはり容疑がある以上は「逮捕されない」とも断言できません。
    ただし、次に挙げるようなケースでは、逮捕される可能性は低いと考えられます。

    • 警察が捜査しても容疑者として特定されないケース
    本人にたどり着く情報が一切ない場合は、捜査を尽くしても警察に容疑者として特定されず、逮捕もされません。とはいえ、一個人が証拠の有無や捜査の手法を知ることはできないので「どうせ逮捕されないだろう」などと考えるのは無謀です。

    • 犯行を証明する証拠が存在しないケース
    被害者の申告があるだけで、ほかに犯行を証明する証拠が存在しない場合は、誤認逮捕や冤罪につながる危険があるため捜査機関も逮捕に消極的です。
    ただし、わいせつな行為などがあったかどうかは判然としないものの、当日、ふたりきりで会っていたことは間違いないといった状況がある場合は、被害者の申告に信憑性があれば逮捕されることもあります。

    • すでに任意の事情聴取で対応しているケース
    当日、その場でトラブルになって警察官が駆けつけており、その際に任意で事情聴取を受けて素直に対応した状況があったなら、逮捕の要件である「逃亡または証拠隠滅を図るおそれ」は否定される可能性があります。裁判官が逮捕状を発付しないので、逮捕の危険は低くなるでしょう。

    • すでに示談が成立しているケース
    当事者の双方が話し合いをして、示談金を支払う代わりに被害届を取り下げるという約束が交わされている場合は、すでに民事的な解決がなされていると評価されます


    ここで挙げた犯罪には、検察官が起訴する際に被害者の告訴を必要とする「親告罪」は含まれないので、示談が成立し、被害届が取り下げられたからといって必ず逮捕を回避できるとは断言できません。

    しかし、すでに被害者が「犯人を罰してほしい」という意思を持っていない事件では、検察官・裁判官も厳しい処罰を下す必要がないと判断しやすくなるでしょう。

4、ワンナイトのトラブルは弁護士に相談を

スマホやSNSといったツールさえあれば気軽にワンナイトの関係を楽しむことができる社会になりましたが、トラブルに発展するケースは少なくありません。

ワンナイトのトラブルを穏便に解決したいと望むなら、弁護士に相談しましょう。

  1. (1)事件化の回避が期待できる

    トラブルに巻き込まれても、早い段階で弁護士にサポートを依頼すれば、素早い示談交渉によって警察への届け出を防ぎ、事件化を回避できる可能性が高まります

    示談交渉は個人でも可能ですが、トラブルの当事者同士が顔をあわせて話し合えば、言い分が食い違って白熱しやすいので、穏便な和解は難しいでしょう。

    弁護士に対応を任せれば、無用な言い争いを避けて、冷静で建設的な交渉が実現します。過度に高額な示談金の要求を受けており、交渉が難航している場合も、弁護士が対応することで適切な金額での決着が期待できるでしょう。

  2. (2)厳しい処分の回避が期待できる

    事件化が避けられない事態に発展しても、必ず逮捕・刑罰を受けるわけではありません。
    弁護士が捜査機関に対して逃亡や証拠隠滅を図るおそれがないことを客観的に主張して逮捕を回避し、合意があったことの証拠を示して無罪を主張するといった対応が期待できます。

    容疑をかけられている本人が「合意のうえだった」「罪を犯してはいない」と主張しても、相手の申告を信用して事件を組み立てている捜査機関は容易に信用してくれません。

    弁護士が法的な観点から容疑者にとって有利な証拠を示すことで、捜査機関も無罪の可能性を無視できなくなります

5、まとめ

ワンナイトの関係を楽しんでいると、あとになって犯罪の容疑をかけられてしまう危険があります。逮捕や刑罰だけでなく、民事的にも訴えられて不倫慰謝料の請求を受けるなど民事的なダメージも考えられるので、トラブルが発生したら迅速な解決が肝心です。

ワンナイトのトラブルの解決は、刑事事件・民事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 所沢オフィスにおまかせください。

逮捕の回避や無罪の主張、慰謝料や示談金の減額交渉など、トラブル解決に向けて最適なサポートを尽くします。

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