親の監督責任とは? 子どもが何歳まで親は責任を負うのか?
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子どもが誰かに怪我をさせてしまった、子どもが他人の物を壊してしまったなど、子どものトラブルが起きた場合、適切な対応をどうとるべきなのか、悩む方は少なくないでしょう。
もし子どもによるトラブルが生じた場合には、子どもの親としてはどのような責任を問われるのでしょうか。また、子どもが幼い内は親の責任が伴いますが、具体的には何歳まで親の監督責任が生じるのかも気になるところです。
今回は、子どもに対する親の監督責任について、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。
1、親の監督責任とは?
親の監督責任とはどのようなものなのでしょうか。
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(1)親の監督責任とは
親の監督責任とは、損害を発生させた子どもを監督すべき地位にある親が負う責任です。本来であれば、加害者本人に責任があります。
しかし、子どもが加害者であった場合には、未成年者であるため十分な判断能力がなく法律上責任が認められないことがあります。そのような場合には、子どもに代わって親が賠償責任を負います。これが親の監督責任です。 -
(2)親権者と監護権者のどちらが監督責任を負うのか
子どもに両親がいる場合には、両親が親権者として監督責任を負いますが、離婚をしている場合には、親権者に指定されている親が監督責任を負います。
では、親権者と監護権者が別々に指定されている場合には、どちらが監督責任を負うことになるのでしょうか。
親権とは、未成年者である子どもを監護、養育し、財産の管理や代理人として法律行為をする権利・義務のことをいいます。監護権とは、子どもと一緒に生活をして、子どもの世話や教育をする権利・義務のことをいいます。
通常、監護権は、親権に含まれていますので、親権者に指定された親が監護権も行使することになります。しかし、親権と監護権は、別々に指定することもできますので、たとえば父親が親権者、母親が監護権者とすることも可能です。
このような場合には、子どもと一緒に生活する監護権者が監督責任を負うことになります。
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2、子どもがトラブルを起こしたときは親が責任を負うのか
子どもがトラブルを起こした場合には、誰が責任を負うことになるのでしょうか。また、子どもが何歳になるまで監督責任を負わなければならないのでしょうか。
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(1)子どもに責任能力がない場合
民法では、子どもは責任能力がない場合、賠償責任を負わないと定められています(民法712条)。責任能力とは、自分の行為の責任を弁識することができるだけの知能を有している状態をいい、裁判例などでは12歳前後が責任能力の境界線になると考えられています。そのため、小学校を卒業して、中学生になっていれば責任能力が認められるケースが多いといえます。
ただし、責任能力の有無は、個別具体的に判断されることになりますので、子どもの成長発達状況によっては、12歳未満であっても責任能力が肯定されることもあります。
子どもが責任無能力者の場合には、子どもではなく親に賠償責任(監督責任)が生じます。 -
(2)子どもに責任能力がある場合
原則として、子どもに責任能力がある場合は、加害者本人である子どもが賠償責任を負います。
しかし現実には、子どもに責任能力があるとはいっても、被害者に生じた損害を賠償する資力はないことがほとんどでしょう。また、親には子どもへの監督責任がありますので、親が一切責任を負わないとするのも妥当ではありません。
そこで、子どもに責任能力がある場合であっても、不法行為による結果と監督義務違反との間に相当因果関係がある場合には、監督義務者にも不法行為責任が生じ、親も賠償責任を追及される可能性があります。
3、親が損害賠償責任を負う場合はどうなる?
親が損害賠償責任を負う場合は、どうなるのでしょうか。
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(1)監督義務を怠らなかったことを立証できれば賠償責任を免れる
子どもが責任無能力者である場合は、監督義務者の親が賠償責任を負います。
しかし、親の監督責任は、無過失責任ではありませんので、- 監督義務を怠らなかったこと
- 監督義務を怠らなくても損害が生じたこと(因果関係がないこと)
を証明すれば、賠償責任を免れることができます。
ただし、親が監督義務を尽くしていたということの証明は、非常に困難であり、多くの裁判例などで親の責任が肯定されてきました。子どもが直接的な監視下にないという理由だけでは、親の監督責任は免れることはできませんので注意が必要です。 -
(2)子どもに責任能力がある場合における親の責任
子どもに責任能力があったとしても、親に監督義務違反がある場合には、親自身にも不法行為が成立しますので、子どもと一緒に損害賠償をしていかなければなりません。
親にも固有の責任が生じるケースとしては、以下のケースが挙げられます。- 子どもが不法行為をしたときに親がそれを現認していた場合
- 子どもが不法行為に使用した道具が親から渡されたものであり、用法の指示を怠った場合
- 子どもが日頃から非行傾向があり、他人に何らかの危害を加えるおそれがあるにもかかわらず、十分な監護や教育を怠った場合
- 日頃から子どもの行動を把握しないで問題性に気付かなかった場合
中高生の子どもに非行傾向があり、日頃から補導や学校からの指導を受けているにもかかわらず、それに対して、親が適切な監督をしていないという場合には、親にも子どもが起こした不法行為の責任が問われる可能性がありますので、注意が必要です。
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(3)子どもが罪を犯した場合には親も逮捕されるのか?
これまで説明した親の監督責任とは、あくまでも民事上の責任の話です。
しかし、民事上の責任と刑事上の責任とでは話は別です。刑法では、14歳未満の子どもが犯罪をしたとしても刑事責任能力がありませんので処罰されることはありません(刑法41条)。
犯罪の成否は、行為者ごとに判断しますので、親が監督責任を怠っていたとしても、親が犯罪行為に直接的・間接的にかかわっていない限りは、親が逮捕されたり、処罰されたりすることはありません。
4、子どもが加害者になったときは弁護士に相談を
子どもが加害者になってしまったときには、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)子どもや親の責任の有無を判断してもらえる
子どもが第三者に危害を加えてしまった場合には、子どもの責任能力の有無によって、子どもおよび親の責任の有無が異なってきます。
刑事上の責任能力は、14歳以上というように年齢で明確に区別されていますが、民事上の責任能力については、おおむね12歳前後というように曖昧な基準であり、個別具体的な状況に応じて責任の有無が変わってきます。
子どもの責任能力の有無の判断には、裁判例などの理解が不可欠となりますので、まずは専門家である弁護士に相談をし、判断してもらうとよいでしょう。
また、親としてどのような監督義務を果たしていたかによって、親の責任の有無も変わってきますので、弁護士に相談をする際には親の責任の有無についても判断してもらうとよいでしょう。 -
(2)被害者との示談を任せることができる
監督責任が親にある場合、子どもが第三者に与えた損害を賠償しなければなりません。しかし、賠償額の算定は、さまざまな要素を考慮しなければなりませんので、適正な賠償額を算定するには専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
また、加害者と被害者の当事者同士では交渉が困難なケースもありますので、弁護士に依頼をして示談交渉を任せれば精神的な負担も軽減されるでしょう。
子どもに刑事責任能力があり、子どもの行為が犯罪に該当する場合には、被害者との示談の有無によって、その後の処分が変わってくることがあります。少しでも有利な処分を獲得するためには、早期に被害者との間で示談を成立させる必要があります。早めに弁護士に相談をして被害者との示談対応を進めるようにしましょう。
5、まとめ
子どもが何歳であるかによって、親の監督責任が異なってきます。裁判例では、子どもの民事上の責任能力は、おおむね12歳前後が境界線とされていますが、事案によってその年齢は前後します。子どもの責任の有無や親の監督責任の有無を判断してもらうためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
子どもが第三者に危害を加えてしまったという場合には、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています