学校侵入で問われうる罪とは? 逮捕される場合とされない場合

2023年11月21日
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学校侵入で問われうる罪とは? 逮捕される場合とされない場合

令和5年3月、戸田市の中学校で男子高校生が教室に侵入し、制止した男性教員が刃物で切りつけられる事件が起きました。この事件を受けて、文部科学省は防犯カメラや校門のオートロックシステム、警察への通報装置などの設置に対する支援を強化すると発表しており、学校への不法侵入対策が強化されていく見通しです。

この事例のような凶悪事件ではなくても、悪ふざけやいたずら半分で学校に侵入した場合には、罪に問われる可能性があります。

本コラムでは、学校侵入で問われる罪や逮捕される可能性が高い事例、逮捕された場合の流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。

1、学校侵入はどんな罪になる?

小学校や中学校・高校などの学校では、基本的に関係者ではない人が自由に立ち入ることを禁じています。
生徒や教職員、または保護者や学校関係者でない場合には、学校側から許可を受けたうえで立ち入らないといけません。

以下では、無断で学校に侵入した場合に問われる可能性のある罪を解説します。

  1. (1)学校への侵入は建造物侵入罪に問われる

    学校への侵入は、刑法第130条の「建造物侵入罪」に問われる可能性があります。
    本罪は、正当な理由がないのに他人が管理する建造物に侵入した場合に成立する犯罪です。

    ここでいう「建造物」とは、ビル・店舗・施設などを指し、学校もこれに含まれます。
    また、たとえば、学校の校舎には立ち入っていなくても、門・塀・柵などで囲われている敷地に立ち入った時点で「建造物に侵入した」と扱われます。

    学校は執務時間内であれば門が開放されていることも多いため、塀や柵を乗り越えたりしなくとも徒歩で自由に出入りできる場合がありますが、徒歩で敷地に入った場合でも、学校側が立ち入りを認めていなければ「侵入」にあたります
    ほとんどの学校は門や塀などの付近に「関係者以外の立ち入り禁止」といった表示を掲げているので、たとえ堂々と正門から立ち入ったとしても、学校側の意思を無視して侵入すれば建造物侵入罪に問われてしまう可能性があるのです。

  2. (2)侵入の目的によっては別の罪も成立する

    上記のように、学校への侵入行為は建造物侵入罪に問われますが、侵入の目的によっては別の罪が同時に成立する可能性があります。

    たとえば、学校の職員室に保管されている資料などを盗む目的で侵入した場合は刑法第235条の「窃盗罪」に問われます。
    また、校内の更衣室に侵入して盗撮をした場合には、性的姿態撮影等処罰法第2条の「撮影罪」に問われます。
    さらに、母校の教職員に対して学校在籍時の指導に逆恨みを抱き報復として暴力をふるう、いわゆる「お礼参り」と呼ばれる行為を行った場合は、刑法第208条の暴行罪や同第204条の傷害罪に問われることになるのです。

    ただし、複数の罪が成立するとしても、複数の罪で処罰されるとは限りません
    犯罪の手段または結果である行為がほかの罪名に触れる場合は、刑法第54条1項後段の「牽連犯(けんれんはん)」となり、もっとも刑罰が重いひとつの罪で処罰されます。
    たとえば、学校に侵入して窃盗をはたらいた場合、建造物侵入罪は窃盗罪の手段として扱われるので、両罪は牽連犯の関係です。
    この場合、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が定められている窃盗罪のほうが刑罰が重いので、窃盗罪の範囲で処罰されます。

    もっとも、建造物侵入罪は刑法に定められている犯罪のなかでも比較的に軽い刑罰が定められているために、ほかの犯罪が同時に成立する場合は建造物侵入罪よりも厳しく罰せられることが多いといえます。
    複数の罪ではなくひとつの罪だけが適用されるからといって、建造物侵入罪より刑罰が軽くなるわけではないことに注意してください。

2、学校侵入で逮捕されるケース・逮捕されないケース

学校への侵入は建造物侵入罪などの罪に問われますが、「学校に侵入した」という理由で必ず逮捕されるわけではありません。
以下では、学校侵入で逮捕されるケースと逮捕されないケースについて、それぞれ解説します。

  1. (1)学校に侵入して児童・生徒・教職員などに危害を加えた場合

    学校に侵入して児童・生徒を無差別で殺傷したり、冒頭で紹介した事例のように教職員を刃物で刺したりなど、児童・生徒・教職員などの生命や身体に危害を加えた場合には、ただちに身柄を拘束しないとさらに危険が増すため、その場で現行犯逮捕される可能性が高いでしょう

    仮に、その場から逃げ延びたとしても、殺人・殺人未遂・傷害などは極めて悪質性が高い犯罪であり警察も徹底した捜査を尽くすため、逮捕を避けるのは困難です。

  2. (2)窃盗目的や盗撮目的で侵入した場合

    金品などを盗む窃盗目的や、更衣室・トイレなどで盗撮をする目的で侵入した場合も、重責をおそれて逃亡や証拠隠滅を企てるおそれがあると疑われやすいため、逮捕される可能性が高いといえます。

    窃盗や盗撮は未遂であっても処罰の対象となるため、たとえ犯行前に発見されて窃盗や盗撮を遂げていなくても、厳しい処分は避けられません

  3. (3)肝だめしなどいたずら半分で侵入した場合

    肝だめしなどのように、いたずら半分で「学校に侵入する」という行為自体をはたらいたケースでは、建造物侵入罪が成立するとはいえ、ほかの不法な目的と比べると悪質性が低いため、注意や警告に応じれば逮捕されずに済まされる可能性が高いといえます

    ただし、教職員や警備員などに発見されて声をかけられたのに逃走した、制止を振り切る際に教職員などに暴力をふるった、侵入に際してドアやガラス窓を損壊した、といった状況がある場合には、単なるいたずらでは済まされません。
    そもそも学校に侵入する行為自体が犯罪なので、罪から逃れようとしたり、悪質性が高い侵入方法をとっていたりした場合には、逮捕される危険があるのです

3、警察に捕まった!家に帰れるのはいつ?

学校侵入が発覚して警察官がやってきた場合は、逮捕されたか、逮捕されなかったかで家に帰れるタイミングが異なります。

  1. (1)逮捕されなかった場合

    その場で現行犯逮捕されず、さらに警察署に任意同行を求められたものの逮捕されなかった場合は、任意の在宅事件として処理されるか、厳重注意だけで済まされるかのいずれかになるでしょう

    在宅事件として処理される場合は、取り調べなどの必要に応じて警察署に呼び出しを受けるので、当日の取り調べが終われば帰宅が許されます。
    ただし、逮捕されないだけで建造物侵入罪などの捜査は進められるため、在宅のまま検察官に書類送検されて、在宅起訴されて刑罰を受ける可能性もあります。

    厳重注意だけで済まされた場合には、当日の取り調べや事情聴取が終われば帰宅を促されます。
    その後の刑事処分はないので、基本的に、刑罰を受けたり前科や前歴がついたりする事態を心配する必要はありません。

  2. (2)逮捕された場合

    警察に逮捕された場合は、警察の段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内、合計72時間を限界とした身柄拘束を受けます。
    ここで検察官が釈放を指揮すれば帰宅できますが、検察官が勾留を請求した場合はさらに10~20日間の身柄拘束が続くので帰宅できません

    さらに、勾留が満期を迎える日までに検察官が不起訴を選択すればその後の刑事裁判は開かれないので即日で釈放されて帰宅が許されますが、検察官が起訴した場合は被告人としての勾留を受けてしまいます。

    被告人勾留が決定した段階からは、一時的な身柄拘束の解放である「保釈」の請求が可能になるので、保釈が認められれば帰宅できます。
    しかし、保釈が認められない場合には、刑事裁判が終了するまで拘置所に収容されることになります。

4、学校侵入で逮捕や刑罰が不安なら弁護士に相談を

犯罪目的の場合はもちろん、いたずら目的であっても、学校への侵入は犯罪です。
状況次第では逮捕され、厳しい刑罰が科せられる可能性もあるため、できるだけ早く弁護士に相談してサポートを受けましょう。

  1. (1)逮捕の回避や早期釈放に向けたサポートが期待できる

    学校侵入は犯罪ですが、必ず逮捕されるとは限りません。

    とくに、悪質な目的ではなく、教職員や警備員などに発見されて侵入が発覚したあとも素直に警告や制止や警告に従ったといった場合には、逮捕されず任意の在宅事件で処理されたり、厳重注意だけで済まされたりする可能性があります。
    また、学校側が侵入に気付いていない、あるいは何者かの侵入の痕跡はあるが誰が犯人なのか分からないといった状況なら、正直に白状して謝罪すれば逮捕を回避できる可能性があります。

    もし逮捕されてしまった場合でも、悪質な目的ではないこと、深く反省していることなどを示せば、検察官が勾留を請求しなかったり、不起訴になったりして、早期に釈放される可能性があります。

    逮捕の回避や逮捕後の早期釈放を望むなら、弁護士にサポートを依頼してください
    弁護士に依頼すれば、学校側との示談交渉による逮捕の回避や、捜査機関へのはたらきかけによる早期釈放に向けた弁護活動を行うことができます。

  2. (2)厳しい処分の回避に向けたサポートが期待できる

    建造物侵入罪には、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
    ほかの犯罪目的で学校に侵入した場合はさらに重い刑罰が定めされている別の犯罪で処罰されるので、厳しい処分が下される事態を避けるのは難しいでしょう。

    弁護士に依頼すれば、学校側への謝罪や窃盗・盗撮などの被害者との示談交渉、本人の反省や再犯防止に向けた対策のアピールなどを通じて、有利な処分が得られるようはたらきかけることができます

5、まとめ

学校への侵入は建造物侵入罪にあたる行為です。
肝だめしなどいたずら目的の行為であっても犯罪となり、状況によっては逮捕され、厳しく処罰されてしまう可能性があるのです。
さらに窃盗や盗撮といった犯罪目的の侵入であれば、さらに重い刑罰が科せられるおそれもあります。

罪を問われたり重い刑罰を科されたりする事態を避けるためにも、学校に侵入してしまった方は、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。
刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、穏便な解決に向けてサポートします。

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