借金で裁判を起こされた! 取り下げは可能? 放置するとどうなる?
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借金の支払督促や裁判所からの呼出状を無視すると、債権者の言い分が認められて手続きが進み、一括払いが命じられたり、最終的に財産を差し押さえられたりするリスクがあります。
しかし、実際に借金の返済が滞ってしまった場合、どのような流れで裁判手続になるのか、裁判を取り下げてもらう方法はないのかなど、不安に感じられる方もいるでしょう。
本コラムでは、借金の返済をしなかった場合の裁判手続の流れや、裁判所に対する具体的な対処方法について、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。
1、借金を滞納して訴えられるまでの流れ
借金を滞納してから裁判手続をとられるまでの大まかな流れを解説します。
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(1)ハガキや電話で催促・督促を受ける
貸金会社やクレジット会社への返済が遅れると、支払期限の数日後にハガキや電話で催促され、新たな支払期限を指定されるのが一般的です。それでも滞納を続けた場合は、「督促状」「催告状」などの書類が送られるようになります。
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(2)分割払いができなくなり一括請求を受ける
督促状や催告状を無視していると、貸金や商品等の分割払いができなくなり、残金を一括で払うよう請求されるようになります。これを「期限の利益喪失」といいます。期限の利益を喪失すると、債権者と和解交渉をしなければ、分割払いを続けることはできなくなります。
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(3)代位弁済が行われる
貸金やクレジットの契約をする際に、保証会社に保証を委託していた場合は、保証会社が代わって債権者に弁済(代位弁済)をします。代位弁済後は保証会社が債権者となり、支払いを請求されることになります。
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(4)担保権が実行される
住宅ローンや自動車ローンなどで、抵当権や所有権留保などの担保権を設定している場合は、担保物件が処分されます。具体的には、抵当権を設定した不動産が競売にかけられたり、所有権が留保された自動車が引き揚げられたりします。
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(5)裁判を起こされる
期限の利益を喪失してさらに放置していると、債権者は裁判手続による回収に移行し、支払督促という手続きか訴訟手続をとられ、最終的に給与差し押さえなどの強制執行となるおそれがあります。
2、借金の滞納に対する裁判への対処方法
支払督促や訴訟などの裁判手続を起こされた場合、債権者が強制執行をするのに必要な「債務名義」を取得されないように対処するのがポイントです。
以下、具体的な対処方法を解説していきます。
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(1)支払督促が届いた場合は異議申し立てをする
支払督促とは、債権者から提出された申立書のみを審査して、債権者が請求する金額を支払うよう命じる簡易裁判所の手続きです。
債権者の申立書に不備がなければ、「支払督促」という書類が債務者に郵送されますが、異議の申し立てをすると、訴訟手続に移行します。
債権者の請求内容に間違いがなく、支払い義務がある場合でも、異議を申し立てた上で、訴訟の中で分割払いの和解交渉も可能です。
なお、支払督促に異議申し立てをしなかった場合は、数週間後に「仮執行宣言付き支払督促」が郵送されることになります。仮執行宣言付き支払督促は強制執行が可能な債務名義であり、異議申し立てをしても債務名義としての効力は失われません。
そのため、最初の支払督促が届いた段階で直ちに異議申し立てをするのが賢明です。
異議申し立てができる期間と、方法は以下のとおりです。① 異議申し立てができる期間
1回目に送られてくる支払督促に対する異議は、「送達」の日から2週間経過後、仮執行宣言付き支払督促が発付されるまでの間、申し立てることができます。
2回目に送られてくる仮執行宣言付き支払督促に対する異議は、「送達」の日から2週間以内に申し立てる必要があります。
送達とは、本人や同居の家族が郵便物を受け取ることを意味しますが、裁判所が発送した時点で送達されたとみなされるケースもあるので注意が必要です。
② 異議申し立ての方法
通常は支払督促などの通知に異議申立書の用紙が同封されているので、所定の事項を記入し、押印して作成することができます。
異議の理由を記載する必要はありませんが、分割払いの和解を希望する場合は、分割払いを希望する旨と月々の支払い可能額を記載しておくのもいいでしょう。 -
(2)訴状が届いた場合は答弁書を提出する
民事の訴訟手続は、訴状や異議を申し立てられた支払督促に記載された債権者の請求の当否について、法廷での審理により判断される手続です。
債権者が貸金などの支払いを求める訴訟を提起した場合は、訴状という書類と裁判期日を通知する呼出状が、支払督促に異議を申し立てた場合は、呼出状が送達されます。
訴訟になった場合は、答弁書を提出し、裁判の期日に出頭するのが基本的な対処方法です。訴状や支払督促に記載された請求に間違いがない場合でも、裁判の期日に出席して分割払いなど和解交渉をすることもできます。
なお、貸金を請求されている訴訟では、過去の取引について適正な利息計算をすることで請求額が減額されることもあるので、詳しい対処方法について弁護士のアドバイスを受けるのが得策です。
答弁書の書式は、最高裁判所のウェブサイトからダウンロードできるほか、所沢や川越などにある簡易裁判所に用紙が備え付けられているので、これらを利用することもできます。 -
(3)債権者に支払督促や訴えを取り下げてもらうことはできる?
債権者は、債権回収のために一定のコストをかけて裁判手続をとっているので、よほどのことがなければ訴訟などを取り下げることはありません。
しかし、以下のケースでは、債権者が訴訟などを取り下げることも考えられます。① 分割払いなどの和解がまとまった場合
裁判手続外で分割払いなどの和解がまとまった場合は、債権者が訴えなどを取り下げることもないわけではありません。
しかし、和解による分割払いが滞った際に、すぐに強制執行できるように判決などの債務名義を取得しておくメリットもあるので、取り下げには応じないケースも多いでしょう。
② 債権が時効にかかっている場合
貸金などの債権が時効にかかっている場合は、「時効を援用する」旨を記載した答弁書や督促異議申立書を提出すると、債権者が申し立てを取り下げることもあるでしょう。
貸金などの一般的な金銭債権の時効期間は5年または10年ですが、債務者が「時効を援用」することにより債権を消滅させる効果が生じるので、答弁書などで時効を援用することを明示する必要があります。
③ 債務整理をした場合
債務整理とは、借金の問題を解決するための手続きで、主に任意整理、個人再生、自己破産の3種類の方法があります。
このうち、個人再生や自己破産は、基本的にすべての借金を全額あるいは大幅にカットしてもらう裁判所の手続です。
これらの手続きが開始されると、債権者は個別に強制執行をして債権を回収することができなくなるので、裁判手続を進める意味もなくなり、訴えなどを取り下げることも多くなります。
一方、任意整理は個別に債権者と交渉して、利息を減免してもらうなどして和解する方法です。任意整理には、裁判手続や強制執行を止める効力はないので、裁判手続を起こされた場合は、一括払いの判決を避けるために、不利な条件で和解せざるを得ないこともあります。
3、裁判所からの通知を無視すると生じるリスク
裁判所から送られてきた支払督促や訴状を無視して放置した場合のリスクを解説します。
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(1)一括払いが命じられて和解も難しくなる
裁判所からの通知を無視すると、裁判所は、債権者の言い分のみを基礎にして判断をすることになり、残額を一括で返済するよう命じる仮執行宣言付き支払督促や判決が出されてしまいます。
ここまで手続きが進むと、債権者は強制執行ができる状態になるので、和解の提案や交渉も難しくなります。仮に和解ができたとしても、金利の減免などに応じてもらうのは難しく、不利な条件の和解になる可能性も大きくなるでしょう。 -
(2)裁判手続後は有利な事実が主張できなくなる
裁判手続の通知を無視していると、そのまま手続が進行して、有利な事実や証拠を提出する機会を失うことになります。
仮執行宣言付き支払督促や判決が確定すると、債権者の請求を争うことはできなくなります(ただし、仮執行宣言付き支払督促については一部例外があります。)。
昨今は架空請求の事件が少なくありません。そのため、疑わしいと思って放置していた場合でも、被告が応答しなければ、裁判所は原告の請求どおりの判決をせざるを得ません。身に覚えがある督促や呼び出しであれば、無視せずに答弁書を提出するなどの対応が必要です。
裁判手続や架空請求への対応に不安がある場合は、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。 -
(3)強制執行により給料などが差し押さえられる
強制執行の対象となる財産は、不動産や給料、預貯金などがありますが、雇用されている方は給料を差し押さえられることが多くなります。
給料を差し押さえられると、手取り額の4分の1(または33万円を超える部分の多いほう)が強制的に差し引かれてしまいます。生活費の不足や、他の借金の返済、債務整理に必要な費用の積み立てにも影響するので、強制執行を避けるための早期の対応が重要です。
4、訴えを起こされたら弁護士に相談するのがおすすめ
借金の返済が滞った場合、裁判手続への対応とともに、他の借金の整理も進めるのも有効です。
裁判手続と借金問題解決の専門家である弁護士のサポートを受けるメリットを解説します。
裁判手続は、裁判官と債権回収業務を扱う業者などが相手になり、法律知識がない方にとっては不安に感じられるのも無理はありません。
弁護士は、答弁書など書類の作成から期日への出席まで、裁判手続全般を代理人として代行することができます。また、債権者と分割払いの和解交渉をする場合でも、弁護士が交渉することにより、金利減免など有利な条件で和解を成立させることも期待できます。
② 債務整理のプランを提案してもらえる
借金の問題を抜本的に解決するためには、個別の裁判手続への対応とともに、債務整理を行うことも検討したほうがいいでしょう。
主な債務整理の方法は以下の3つです。
- 任意整理:債権者と交渉して、利息の減免や分割払いの和解を目指す
- 個人再生:裁判所の認可を得て、借金を大幅に減額する
- 自己破産:裁判所の免責許可を得て、借金を免除してもらう
これらの方法は、いずれもメリットとデメリットがあり、住宅ローンの有無など借金の状況などによっても適切な方法が異なります。債務整理の実績がある弁護士に相談し、個々の状況に合った最適な方法を提案してもらうことをおすすめします。
5、まとめ
借金の滞納により裁判手続をとられた場合、放置せずに適切に対応する必要があります。
裁判手続を放置すると、裁判所で債権者の請求が認められて、いずれ強制執行を受けることになります。
強制執行で給与や財産の差し押さえともなれば、生活面や他の借金返済にも大きく影響します。できるだけ早期に債権者との和解交渉を行い、合わせて債務整理による借金問題の抜本的解決を図るのが賢明です。
ベリーベスト法律事務所は、裁判手続への対応や借金問題に関するご相談を随時受け付けております。借金でお悩みの方は、まずは一度ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスにご相談ください。
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