24時間連続で勤務することは違法? 労働基準法における規定について
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2022年度に埼玉県内の労働基準監督署が監督指導を行った718事業場のうち、違法内容としてもっとも多かったのは「違法な時間外労働があったもの」で343事業場が該当しました。
24時間連続勤務は、労働基準法違反か気になるところですが、必ずしも違法ではありません。たとえば、警備員などシフト制で働く方は、24時間連続勤務を指示されることは珍しくないでしょう。
ただし、法定労働時間や残業代などの規制を順守していない場合は違法です。会社に違法な長時間労働を指示された場合や、会社が残業代を適切に支払わない場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
本記事では、24時間連続勤務が労働基準法上どのように取り扱われるのかについて、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。
出典:「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」(埼玉労働局)
1、24時間連続勤務は違法か? 適法か?
24時間連続勤務は、労働基準法との関係で必ずしも違法ではなく、適法に行われているケースがほとんどです。ただし、24時間連続勤務にも法定労働時間の規制が適用されるため、会社がそのルールを守っていない場合は違法となります。
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(1)24時間連続勤務とは
24時間連続勤務とは、出勤してから退勤するまでの時間が24時間以上にわたる勤務をいいます。警備員など待機時間が長い職種や、夜勤が必要な職種などを中心に、24時間連続勤務を採用する会社が見られます。
なお、24時間ずっと働き続けるとは限らず、まとまった時間の休憩が設けられることがあります(たとえば24時間のうち4時間は休憩など)。 -
(2)24時間連続勤務は適法|ただし法定労働時間の規制あり
24時間連続勤務は、労働基準法によって禁止されているわけではありません。実際に、適法な形で24時間連続勤務が行われているケースも少なくありません。
ただし労働基準法では、法定労働時間に関する規制が以下の通り定められています。- 使用者は原則として、法定労働時間を超えて労働者(従業員)を働かせてはならない
- 法定労働時間は原則として、1日当たり8時間・1週間当たり40時間
24時間連続勤務をする労働者は、少なくとも1日当たりの労働時間が8時間を超えることになるでしょう。また、休憩時間を除外するとしても、1週間につき3日以上24時間連続勤務が発生すると、1週間当たりの労働時間も40時間を超えることが多いです。
法定労働時間の規制に抵触せず24時間連続勤務を指示するには、変形労働時間制や※36協定による対応が必要になります(※2章で後述)。
2、24時間連続勤務に関する労働基準法上の注意点
24時間連続勤務については、労働基準法との関係において、以下の各点の取り扱いを理解しておきましょう。
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(1)法定労働時間との関係性|変形労働時間制・36協定
前述の通り、法定労働時間は原則として、1日当たり8時間・1週間当たり40時間とされています。
24時間連続勤務を指示する場合、法定労働時間を超過することは避けられないので、変形労働時間制(労働基準法第32条の2、第32条の3)を採用するのが一般的です。
変形労働時間制で働く労働者については、対象期間における1週間当たりの平均労働時間が40時間を超えない範囲内で、1日ごとに労働時間を定めることができます。(例)
4週間を対象期間とする変形労働時間制を採用し、対象期間中に24時間連続勤務(うち休憩4時間)を8日間指示する
→対象期間中の総労働時間は160時間なので、1週間当たりの平均労働時間は40時間であり、変形労働時間制の枠内で認められる
変形労働時間制によって認められる労働時間を超える部分は、時間外労働に当たります。会社が労働者に時間外労働を指示するためには、労使協定(36協定)でルールを定めた上でその内容に従わなければなりません(労働基準法第36条第1項)。
36協定を締結すれば、そのルールの範囲内で時間外労働を指示することが認められます。ただし、36協定を締結した場合でも、許容される時間外労働は原則として45時間以内に制限されるなど(同条第3項、第4項)、労働基準法による規制が適用されます。 -
(2)仮眠時間の取り扱い|労働時間に当たる場合がある
24時間連続勤務をする労働者には、体力回復を目的として仮眠時間が与えられることがあります。
仮眠時間が労働時間(=賃金が発生する時間)に当たるかどうかは、労働者が会社の指揮命令下にあるかどうかによって決まります。
仮眠時間中も業務が発生したら対応しなければならない場合には、労働時間に当たります。これに対して、仮眠時間中は完全に労働から解放されている場合には、労働時間に当たりません。
仮眠時間が労働時間に当たるかどうかによって、会社に対して請求できる賃金(残業代)の金額が大きく変わりますので、弁護士に相談しながら正しく判断しましょう。 -
(3)待機時間の取り扱い|業務が発生し得る場合は労働時間に当たる
24時間連続勤務をする労働者は、実際の業務に従事していない時間(待機時間)が多くなる傾向にあります。
ただし待機時間については、業務が発生したら対応することが義務付けられているのが通常です。この場合、待機時間中も会社の指揮命令下に服していると評価されるため、労働時間として賃金が発生します。 -
(4)残業代の取り扱い|変形労働時間制の場合の計算方法
変形労働時間制が適用される労働者については、1日ごと・1週間ごと・対象期間ごとにそれぞれ時間外労働の時間数を計算し、最終的に合算します。通常の計算方法に比べて複雑になるので、不安がある場合は弁護士にご相談ください。
3、24時間連続勤務が違法となるケース
24時間連続勤務は、労働基準法の枠内で適法に指示することもできますが、以下のいずれかに当たる場合は違法となります。会社から違法な取り扱いを受けている場合は、弁護士へのご相談をおすすめします。
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(1)適切な残業代(割増賃金)が支払われていない
法定内残業・時間外労働・休日労働・深夜労働に対しては、以下の割増率による割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。
法定内残業(所定労働時間を超え、
法定労働時間の範囲内の労働)割増なし 時間外労働(法定労働時間を超える労働) 25%以上
※月60時間を超える部分は50%以上休日労働(法定休日の労働) 35%以上 深夜労働(午後10時から午前5時までの労働) 25%以上 時間外労働かつ深夜労働 50%以上
※月60時間を超える部分は75%以上休日労働かつ深夜労働 60%以上
正しく割増賃金が支払われていない場合は、会社に対して未払い残業代を請求しましょう。
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(2)36協定の上限を超えて労働させている
会社が労働者に対して時間外労働または休日労働を指示できるのは、36協定を締結した上で、そのルールを順守している場合に限られます。36協定で定められた上限を超えて労働者を働かせることは、労働基準法違反です。
違法に時間外労働や休日労働を指示された場合は、弁護士を通じて会社に是正を求めることをおすすめします。 -
(3)会社が安全配慮義務に違反している
会社は、労働者が生命・身体等の安全を確保しながら労働できるように、必要な配慮を行う義務を負います(労働契約法第5条)。
(例)- 危険な作業の際には安全管理措置を講じる
- 過剰な長時間労働によって、労働者が健康を害しないように配慮する
- 職場におけるハラスメントを防止する
会社が安全配慮義務を怠った結果として、労働者に何らかの損害が生じた場合、会社は労働者に対して損害賠償責任を負います。弁護士のサポートを受けながら、会社の安全配慮義務違反の責任を追及しましょう。
お問い合わせください。
4、違法な長時間労働・未払い残業代の請求については弁護士に相談を
会社から違法な長時間労働を指示された場合や、残業代が正しく支払われていない場合には、弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士は、法的な根拠に基づいて会社に労働基準法違反の是正を求めます。また、未払い残業代請求に関しては、残業の証拠収集・残業代の適切な計算・会社との交渉・法的手続きを通じて、会社に対して適正額の残業代の支払いを請求します。
会社における待遇を改善するためには、弁護士のサポートが効果的です。長時間労働や残業代の未払いにお悩みの方は、まずは労働問題の実績がある弁護士へ相談することをおすすめします。
5、まとめ
24時間連続勤務は、労働基準法の下で適法に指示できますが、一定のルールを遵守しなければ違法となります。会社から違法に長時間労働を指示された、または残業代が正しく支払われていない可能性がある場合は、対応について弁護士のアドバイスを受けましょう。
ベリーベスト法律事務所は、会社とのトラブルに関する労働者のご相談を随時受け付けております。24時間連続勤務を指示されたことについて疑問を感じている方や、その他の会社とのトラブルをお抱えの方は、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています