みなし残業やサービス残業は違法? 未払い残業代の請求方法もご紹介

2025年03月05日
  • 残業代請求
  • みなし残業
  • サービス残業
みなし残業やサービス残業は違法? 未払い残業代の請求方法もご紹介

日本労働組合総連合会の令和6年の調査によると、「賃金不払い残業(サービス残業)をすることがある」と回答した労働者は、28.4%、特に教育、学習支援業は50.0%と高い結果であることがわかりました。

サービス残業は違法であるほか、みなし残業(固定残業代)も実際の状況によっては違法となることがあります。本記事では、サービス残業やみなし残業の違法性や、未払い残業代を請求する方法などをベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。

出典:「『働き方改革』(労働時間関係)の定着状況に関する調査2024」(日本労働組合総連合会)


労働問題を弁護士に相談 労働問題を弁護士に相談

1、サービス残業・みなし残業は違法?

「サービス残業」と「みなし残業」は、似ているようで全然違います。サービス残業は違法ですが、みなし残業が違法かどうかは実態に応じて判断されます。

  1. (1)サービス残業は違法

    「サービス残業」とは、残業代が支払われない残業の俗称です。

    管理監督者など一部の例外を除き、残業をした労働者に対しては、使用者は残業代を支払わなければなりません。
    残業代を支払わないサービス残業は、労働基準法違反に当たります

    残業代は、労働者が使用者の指揮命令下で働いている時間に対して発生します。たとえば、以下のような時間について残業代が支払われていない場合は、サービス残業として違法となります。

    (例)
    • 制服に着替える時間
    • 開店前準備の時間
    • 後片付けの時間
    • 手待ち時間(具体的な業務はないが、対応できる準備をしておくように指示されている時間)
    など
  2. (2)みなし残業(固定残業代)は、実態に応じて判断される

    「みなし残業」とは、実際の残業時間にかかわらず、一定の時間残業をしたものとみなして残業代を支払う制度です。「固定残業代」とも呼ばれます。
    たとえば、1か月当たりの固定残業時間が45時間である場合には、残業が月45時間に達するまで、労働者に対して支払われる残業代の額は一定です。

    みなし残業(固定残業代)は、適切な手続きを踏んで導入されていれば、必ずしも違法ではありません。
    具体的には、以下の事項を労働者に明示した上で、固定残業時間を超える残業に対しては追加残業代を支払うことが必要です。

    • 固定残業代を除いた基本給の額
    • 固定残業時間
    • 固定残業代の金額の計算方法
    • 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

2、みなし残業(固定残業代)が違法となるケース

以下に挙げるようなケースでは、みなし残業(固定残業代)が違法となります。これらのケースに当てはまる方は、お早めに弁護士へご相談ください。

  1. (1)労働者に明示すべき事項を明示していない場合

    前述のとおり、みなし残業(固定残業代)を適用するためには、使用者が労働者に対して以下の事項を明示する必要があります。

    • 固定残業代を除いた基本給の額
    • 固定残業時間
    • 固定残業代の金額の計算方法
    • 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨


    これらの事項のうち、ひとつでも労働者に対して明示していない事項がある場合は、みなし残業(固定残業代)が適用されません。この場合、使用者は労働者に対して、実際の残業時間に応じた残業代を支払う義務を負います。

  2. (2)固定残業時間の超過分につき、残業代を支払っていない場合

    あらかじめ決められた固定残業時間を超過した場合、使用者は労働者に対して追加残業代を支払わなければなりません。

    追加残業代の割増率は、下表の割合以上とする必要があります。

    残業の種類 残業の概要 割増率
    時間外労働 法定労働時間を超える残業 通常の賃金に対して25%
    ※月60時間を超える部分については、通常の賃金に対して50%
    休日労働 法定休日における労働 通常の賃金に対して35%
    深夜労働 午後10時から午前5時までに行われる労働 通常の賃金に対して25%


    固定残業時間の超過分につき、上表の割合以上の割増賃金を支払っていない場合は、労働基準法違反です。この場合、労働者は使用者に対して未払い残業代を請求できます。

  3. (3)固定残業時間が長すぎるなど、公序良俗に反する場合

    固定残業時間が長すぎる場合は、みなし残業(固定残業代)が公序良俗違反によって無効となることがあります(民法第90条)。

    36協定によって定めることができる時間外労働の上限は、臨時的な必要性がある場合を除き、原則として45時間です。

    月45時間を大きく超える固定残業時間が設定されている場合には、みなし残業(固定残業代)が公序良俗違反によって無効となる可能性が高いと考えられます。

    みなし残業(固定残業代)が無効である場合、使用者は労働者に対して、実際の残業時間に応じた残業代を支払わなければなりません。

3、未払い残業代の請求方法

残業代が正しく支払われていないときは、会社に対して未払い残業代を請求しましょう。未払い残業代請求の基本的な流れを解説します。

  1. (1)残業の証拠を確保する

    まずは、以下に挙げるような残業の証拠を確保しましょう。有力な客観的証拠を確保できれば、未払い残業代請求の成功率が高まります。

    (例)
    • 勤怠管理システムやタイムカードの記録
    • オフィスの入退館履歴
    • 交通系ICカードの乗車履歴
    • 業務用メールの送受信履歴
    • 業務日誌
    など
  2. (2)残業代の額を計算する

    残業の証拠を確保できたら、以下の式を用いて残業代の額を計算しましょう。割増率は、前掲の表をご参照ください。

    残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間数

    1時間当たりの基礎賃金=1か月の総賃金(以下の手当を除く)÷月平均所定労働時間

    残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間数

    1時間当たりの基礎賃金=1か月の総賃金(以下の手当を除く)÷月平均所定労働時間

    <総賃金から除外される手当>
    • 残業手当(時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当)
    • 家族手当(扶養人数に応じて支払うものに限る)
    • 通勤手当(通勤距離等に応じて支払うものに限る)
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当(住宅に要する費用に応じて支払うものに限る)
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

    月平均所定労働時間=年間所定労働時間÷12か月
  3. (3)会社と交渉する

    未払い残業代の額が計算できたら、会社に対して残業代の精算に関する交渉を提案しましょう。

    交渉を提案するに当たっては、人事担当者などに直接伝える方法や、内容証明郵便で請求書を送付する方法などがあります。特に、会社が残業代請求に応じる気配がない場合は、内容証明郵便を送付するのがよいでしょう。

    内容証明郵便は、郵便局が差出人・宛先・日時・内容を証明する郵便です。会社に対して正式な請求であることを伝えられるほか、残業代請求権の消滅時効の完成を6か月間猶予する効果があります(民法第150条第1項)。

    残業代請求権は、発生から3年が経過すると時効によって消滅します(労働基準法附則第143条第3項)。過去にさかのぼって未払い残業代を請求する際には、速やかに内容証明郵便を送付しましょう。

  4. (4)労働審判を申し立てる

    残業代の精算に関する会社との交渉がまとまらないときは、労働審判を申し立てることが考えられます。

    労働審判は、地方裁判所で行われる労使紛争の解決手続きです。裁判官1名と労働審判員2名が、調停(話し合いによる合意)または労働審判(判断・決定)によって紛争解決を図ります。

    申立てから審判終了までは、およそ2~3か月かかるのが一般的です。原則として3回以内の期日で終結するため、訴訟より早期解決を期待できるのが労働審判の特徴です。

    労働審判を有利に進めるためには、残業の客観的な証拠を十分に確保するなど、事前の準備が必要不可欠です。

  5. (5)訴訟を提起する

    労働審判に対して異議が申し立てられた場合は、自動的に訴訟へ移行します。また、労働審判を経ることなく訴訟を提起することもできます。

    訴訟は、裁判所で行われる紛争解決手続きです。労働者は未払い残業代が発生していることを立証し、会社はそれに対して反論します。

    労働者側の請求が認められれば、裁判所は判決によって、会社に対して未払い残業代の支払いを命じます。勝訴判決が確定すれば、労働者は会社の財産に対して強制執行を申し立てることが可能です。

    訴訟は専門的な手続きであり、敗訴すると取り返しがつかないため、労働審判以上に入念な準備が求められます。

4、未払い残業代請求を弁護士に相談するメリット

未払い残業代請求について弁護士に相談することには、主に以下のメリットがあります。

  • 残業の証拠収集について、具体的なアドバイスを受けられる
  • 未払い残業代の額を正しく計算できる
  • 会社との交渉を代行してもらえる
  • 労働審判や訴訟などの専門的な手続きにも、適切に対応してもらえる
など


会社と個人が交渉する場合、どうしても会社側が優位に立ちやすくなります。未払い残業代を請求する際には、労働問題の解決実績がある弁護士にサポートを求めることをおすすめします

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ
営業時間外はメールでお問い合わせください。

5、まとめ

サービス残業を強いられている場合や、みなし残業(固定残業代)などの残業制度が適切に運用されていない場合には、未払い残業代が発生している可能性が高いです。弁護士に相談して、未払い残業代請求の準備を整えましょう。

ベリーベスト法律事務所は、会社とのトラブルに関する労働者のご相談を随時受け付けております。サービス残業やみなし残業についてお悩みの労働者の方は、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています