ライブチャットで逮捕されたら何罪?│公然わいせつ罪・職業安定法違法等
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平成26年、動画投稿サイトのライブ配信サービスで性行為の映像を配信していた、自称ライブチャット配信業の男が京都府警に逮捕されました。この事件では、ライブ配信中に捜査員が踏み込んで現行犯逮捕されるというセンセーショナルな逮捕劇だったので、全国的にも大きな話題になりました。
平成24年には「ライブチャットの女神」と呼ばれていた女性がわいせつな映像を配信した容疑で埼玉県警サイバー犯罪対策課などに逮捕された事件も起きています。
視聴者を増やせば多くの収益が期待できる「ライブチャット」ですが、配信内容によっては逮捕の危険があることを忘れてはいけません。ライブチャットではどんなことに気を付けるべきなのでしょうか。また、どんな内容を配信すると逮捕される危険があるのかも気になるところです。
本コラムでは「ライブチャット」の配信で逮捕されるケースや弁護士のサポート内容をベリーベスト法律事務所 所沢オフィスの弁護士が解説します。
1、「ライブチャット」の問題点
本来、ライブチャットとはインターネットを介して音声・映像・文字を双方リアルタイムに送受信する「ビデオチャット」を指す用語です。
しかし、日本のネット社会におけるライブチャットとは、アダルト映像の配信や異性同士のコミュニケーションツールという意味合いが強く、本来の意味とはかけ離れた意味で解釈されています。
会話が中心のノンアダルトと呼ばれるジャンルのほか、売り出し中のアイドルによるファンとの交流、占いといったジャンルもありますが、総じて「チャットレディ」と呼ばれる女性が出演するという傾向は同じです。
無修正のアダルト映像が配信されてしまう、児童にわいせつ映像のチャットレディとして出演を強いるケースがあるなど、ライブチャットに関連するトラブルは尽きません。
2、ライブチャットに関連する犯罪
ライブチャットに関連しやすい犯罪を挙げていきましょう。
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(1)刑法の「公然わいせつ罪」
アダルト系のライブチャットには、配信タイトルに「無修正」の文字が目立ちます。どこからが「わいせつ」にあたるのかの基準は曖昧ですが、少なくとも無修正のままで性器が確認できる映像をライブ配信すると、刑法第174条の「公然わいせつ罪」の成立は免れられないでしょう。
公然わいせつ罪は「公然とわいせつな行為をした者」を罰する犯罪です。
ここでいう「公然」とは、不特定または多数の人が認識できる状態を指します。ライブチャットは、会員制・有料配信などのシステムが設けられてはいるものの、個人対個人の通信ではないので公然性は十分です。
「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を興奮・刺激させ、正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為と定義されます。ライブチャットでは過激なわいせつ映像が配信されるケースが多く、なかには局部・性器が修正されないまま配信されるものも少なくありません。
警察はサイバーパトロールや利用者の通報などから情報を集めて過激な配信者を監視しているので、冒頭で紹介したような生配信中の逮捕劇といった事態に発展するおそれがあります。
公然わいせつ罪の刑罰は、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。 -
(2)職業安定法違反
ライブチャットの配信者がチャットレディの求人募集をおこなうと「職業安定法」の違反になるおそれがあります。
なぜ職業安定法に触れてしまうのか、ライブチャットとは無関係ではないのかと、不思議に感じる方も少なくないでしょう。
職業安定法第63条2号は「公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる目的の職業紹介・労働者の募集・労働者の供給」について、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金を定めています。アダルトジャンルでの求人・募集はここでいう「有害な業務」にあたるという仕組みです。 -
(3)風俗営業法違反
アダルトジャンルのライブチャットは「風俗営業法」に抵触するおそれがあります。
性的好奇心をそそるための性的な行為を表す場面や人の姿態を映像として見せる形態のビジネスは、風俗営業法第2条8項の「映像送信型性風俗特殊営業」に分類されます。風俗営業のひとつにあたるので、同法第31条の7にもとづく営業の届出が必要です。
スマホひとつでも簡単に映像を配信できる時代になったので、気軽にライブチャットの運営をはじめてしまう方がいるかもしれません。しかし、アダルトジャンルのライブチャットは「風俗営業」にあたるため、届出を怠ると無届営業です。
無届営業には同法第52条4号の規定によって、6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
過去の事例をみると、ライブチャットで摘発されたケースの多くは公然わいせつ罪や職業安定法が主でしたが、近年の事件では警察が風俗営業法違反の適用にも積極的な姿勢をみせているようなので注意が必要です。
3、ライブ配信以外でも逮捕される危険のある行為
ライブチャットの配信者として有名になるには、SNSやブログなどのツールを活用する機会も増えてきます。また、配信以外でも収益をアップするために、撮影済みの動画を公開したいと考える方もいるはずです。
ライブ配信以外でも逮捕されるおそれがあるので、ここで挙げるような行為がないように注意しましょう。
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(1)わいせつ画像・動画のアップロード
無修正のわいせつ画像・動画をアップロードして公開すると、刑法第175条1項の「わいせつ電磁的記録媒体陳列罪」が成立します。
これは「わいせつ物陳列罪」の別形態にあたる犯罪で、わいせつ画像・動画を不特定または多数の人が閲覧できる状態におくことで成立する犯罪です。
販売目的で無修正のアダルト画像・動画を公開し、逮捕された事例も存在します。令和4年5月には、無修正のアダルト動画を有償で公開していた男が警視庁に逮捕されました。1年7か月の間に約2億9400万円もの売り上げを得ていたそうです。
この事例では、警視庁のサイバーパトロールで犯罪が発覚しました。インターネット上のわいせつ画像・動画は常に監視されていると心得ておきましょう。 -
(2)わいせつ画像・動画の自撮り要求
SNSのメッセージなどを介して相手にわいせつな画像や動画をみずから撮影させたうえで送信を求める「自撮り要求」も逮捕の危険が高い行為です。
「はずかしい画像を公開するぞ」などと脅して自撮り撮影やデータの送信を強いた場合は、刑法第223条の強要罪が成立します。
相手が18歳未満の児童にあたる場合は「自撮りポルノ」の強要にあたり、都道府県の青少年保護条例違反に問われることになるでしょう。
埼玉県の「埼玉県青少年健全育成条例」では、平成30年12月の改正で自撮りポルノの要求行為を禁止しています。児童が被害者となる悪質なケースでは、逮捕される危険がより高まると考えておくべきです。
4、逮捕された後の流れと弁護士に依頼すべき理由
ライブチャットの配信が問題となって逮捕されると、その後はどんな処分を受けるのでしょうか。厳しい処分を避けるためには弁護士のサポートが必須ですが、弁護士に相談すればどんなサポートを得られるのかも気になるところでしょう。
逮捕後の基本的な流れを確認しながら、弁護士によるサポートの内容を解説します。
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(1)逮捕後の基本的な流れ
警察に逮捕されると、警察の段階で48時間以内の身柄拘束を受けます。自由な行動が大きく制限されるので、帰宅することも、会社や学校へ行くことも許されません。
警察の取り調べなどを終えると、検察官へと送致されます。いわゆる「送検」と呼ばれる手続きです。送致を受理した検察官は、みずからも取り調べをしたうえで24時間以内に「勾留」の要否を判断します。
勾留を受けると初回で10日間、延長によってさらに10日間以内、合計で最長20日間の身柄拘束が続きます。勾留中は警察へと戻されて、引き続き厳しい取り調べを受けることになるでしょう。
勾留の期限を迎える日までに検察官が「起訴」すると、刑事裁判が開かれます。刑事裁判の場では、裁判官が証拠にもとづいて客観的に審理するので、実際にわいせつな動画を配信していたり、違法な求人・募集をしていたりすれば、有罪判決を受けるおそれが強いでしょう。 -
(2)厳しい処分を回避するには弁護士のサポートが必須
公然わいせつ罪や職業安定法違反などに問われて刑事裁判で有罪判決を受けると、厳しい刑罰が科せられます。
長期にわたる身柄拘束を受けて実名まで報道されてしまい、さらに刑罰も科せられてしまうと、社会復帰も難しくなってしまうのは確実です。
自分が配信しているライブチャットが違法にあたるのかの判断は難しいので、まずは法律の知識が豊富な弁護士に相談してアドバイスを受けるとよいでしょう。問題点をピックアップし、違法となる点を解消すれば、今後も配信者としての活動を維持できる可能性が高まります。
過去の配信が問題となった場合でも、警察が捜査を進めている段階で弁護士にサポートを求めれば、逮捕を回避するためのはたらきかけが期待できます。
任意で取り調べに応じる姿勢があることを申し入れておけば、逮捕が認められる要件である「逃亡・証拠隠滅を図るおそれ」の否定につながるので、逮捕されず在宅事件として処理される可能性が高まるでしょう。
逮捕されてしまったら、早期釈放や不起訴を実現するための弁護活動が必須です。刑事事件の対応はスピード勝負です。逮捕後は72時間以内の弁護活動が重要なので、弁護士への依頼を急ぎましょう。
5、まとめ
「ライブチャット」で過激なアダルト映像を配信すると、公然わいせつなどの罪で刑事事件に発展する危険があります。収益を優先するあまりに違法な配信を続けていると、警察のサイバーパトロールや視聴者からの通報などによって発覚し、事件化されてしまうかもしれません。
とはいえ、実際に違法にあたるのかを個人で判断するのは難しい側面があります。とくに「わいせつ」といえるのかという点は、過去の判例などに照らして慎重に判断する必要があるので、法律の知識や経験がないと正確な答えは得られないでしょう。
ライブチャットの配信について逮捕・刑罰に不安を感じているなら、ベリーベスト法律事務所 所沢オフィスへご相談ください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、解決に向けて全力でサポートします。
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